VOSTOK8 blog - Astronaut' Monologue TOP  >  2007年07月

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水中花



ああ、俺の人生は失敗だ。
これで何度目の自己嫌悪だか解りゃしない。
大雨が降り雷が鳴り響いているのは、鬱屈した夏が吠えてるんだろう。

身の丈に合った事をやろうと思い立ってアルバイト情報誌を買って来た物の、
俺の身の丈が「アルバイト情報誌を買う程度で満足する男」だとしたらどうする。
案の定、俺はアルバイト情報誌を買っただけで満足して、部屋に寝転んでるのさ。

沸点が低いんだよ、何かを成し遂げた気になってる。
アルバイト情報誌を買っただけで、何かを成し遂げた気になったという訳だ。
それは俺にしては大した成果で、まず風呂に入り体を洗い、着替えを済ませ、服を着て、
部屋の扉を開けた上で靴を履き、部屋を出てコンビニエンス・ストアまで歩いた訳だから、
俺にしては上出来だし、その上、アルバイト情報誌とタバコを買って帰って来た訳であり、
この結果は誰にも咎められる事なんて無いと思う。

150円と290円分の安心を買っている。
俺は前に進む意思があるのだという安心を買っている。
まだ完全に最低で最悪な部分には浸っていないという安心を買っている。
安心を買ったのだから、買った安心に浸る事は許されるはずだ。

それで俺はタバコに火を点けて煙を吸い込み、部屋に寝転んでいる。
隣の部屋から聴こえる下手くそなベースが耳障りだが、隣人の顔など知らない。
それは薄い壁を緩やかに振動させ、ブンブンブンと羽音のような迷惑音を響かせている。
掌をパチンと打ち鳴らしてみたが、音は鳴り止まず、仕方が無くて俺は目を閉じた。

ベース音に混じって雷鳴。
ブンブンブン、ドダドダドダ、ゴロゴロゴロ。
大粒の雨音は、何処かの国の政見放送の演説でも聞いてるかのように不躾だ。

明るい仲間が待ってます。
弁当工場パートタイマー朝四時から送迎バス完備。
時給680円昇給アリ。

アルバイト情報誌を買っただけで、何かを成し遂げた気になるような俺だから、
実際、ページの中身なんかには興味が無いし、履歴書を書く気力なんかも無いんだよ。
それなのに何故に「俺には他の誰にも出来ない何かが出来るはずだ」という気分になるのだろう。

駄目な大人を発見しては、鼻で笑って、安心してる。
俺は絶対にこんな大人にならないと、根拠もなく、また安心してる。
ところが根拠が無い事が不安なんだ。

不安は次第に大きくなる。
一秒毎に大きくなって、セロファン状の風呂敷で包まれた気分になる。
息苦しいし、身動きも取れない。
粘着質な不安は、血管に入り込んで、疼きとも渇きとも取れぬ焦燥を促す。
蚊に刺されたような気分になる。

それで俺は体中を掻き毟って叫び倒したい気分になるんだ。
だけど雨音と雷鳴に消されてしまう。
おまけに隣の部屋のベース音にすら勝てる気がしないんだ。

無音は嫌いだ。
だからテレビを点けたまま眠る。
雨音と雷鳴とベース音は邪魔だけれど、ほとんど無音に近い。
俺には関係ない世界の音だ。

昼間からカーテンを閉め切ったままの蒸し暑い部屋で、
俺は虚栄的なテレビの明かりだけを頼りに、タバコに手を伸ばしたりする。
煙を吐き出す瞬間が一番好きだ。

肺が、煙に満ちて、黒く染み、俺自身を汚す感覚に浸る時、
その歪んだナルシスティックなエゴイスティックなヒロイズムに浸る時、
俺には他の誰にも出来ない何かが出来るはずだ、という気分に浸れるという訳だ。

そこで再度アルバイト情報誌に手を伸ばしてみると、
現実の上に現実を塗りたくったような文字ばかりが並ぶので、
すぐに厭になって、またアルバイト情報誌を放り投げる、その繰り返しなんだ。

何を選んでるんだ?
何かを選ぶ余地などないくせに。
俺は俺に相応しい何かってのを探してるんだろう。
俺に相応しくないはずの何かを受け入れるってのが怖いんだろう。
そんな事ぁ、俺自身がよく解ってる。

結局、俺は自分を大きく見せる手段も、小さく見せる手段も知らない。
身の丈に合った自分を受け入れる手段も知らない。
妙に天井の低い部屋に住んでる。
窓が異様にデカイ。

この窓からは全てが見える気がする。
だが見ない、見ようともしない、カーテンを開けようともしない。
俺の人生は失敗だって事だけは、日に日に強く自覚するようになってきてるんだけど、
足を一歩踏み出す為に地面を強く蹴り上げる必要があるならば、はたして俺に足は在るだろうか。
地面を強く蹴り上げるだけの強靭な足が在るだろうか。

身の丈に合った脳髄を受け入れる勇気があるだろうか。
身の丈に合った精神を受け入れる勇気があるだろうか。
身の丈に合った自分自身って何だ?

身の丈に合わない自分自身って何だ?
身の丈に合わない脳髄を受け入れる必要はあるだろうか。
身の丈に合わない精神を受け入れる必要はあるだろうか。

不安は次第に大きくなる。
一秒後に大きくなって、セロファン状の風呂敷で包まれた気分になる。
二秒後に死にたい気分になり、それで三秒後に息を吸い込んでるんだ。
四秒後に、ゆっくりと吐き出す。

ベース音に混じって雷鳴。
ブンブンブン、ドダドダドダ、ゴロゴロゴロ。
大粒の雨音は、何処かの国の政見放送の演説でも聞いてるかのように不躾だ。

入口も無ければ出口も無い場所で、弄んでるだけだ、初めから。
水中花のように。
俺の人生は失敗だ、何処で道を間違えたのか知らんが、失敗だ。

失敗作を失敗作として展示してみてはどうか。
首を吊るんでも、手首を切るんでも、ビルから飛び降りるんでも無い、
最高の、失敗作の展示法ってのが、あるのではなかろうか。

嘘だらけの造花。
汚れた水の中でも、お前は花を咲かせるのか。
ならば俺は、俺が犯した失敗を、雷雨の中で高らかに吠えてやろう。

俺がどれだけ醜くて、惨めで、愚かで、自分本位で情けなくて、
それでも尚、綺麗事を求めて止まないのかを、誰より高らかに吠えてやろう。
だって俺は駄目男なんだからな。

五秒後、俺はタバコに火を点けて、湿ったカーテンを開けた。
一瞬にして、一層大きく響き渡る、ブンブンブン、ドダドダドダ、ゴロゴロゴロ。
俺は息を吸い込み、高らかに声を張り上げてやろうと思ったら、窓の雨でタバコの火が消えた。

はぁ。

俺は濡れ果てたタバコを指先でピンと弾いて、窓を閉めた。
それから部屋に寝転んで、アルバイト情報誌を数ページめくって、寝た。
身の丈に合った天井に手を伸ばすと、やっぱり届かなくて、何だか少しだけ安心した。
[ 2007/07/28 11:51 ] 小説 | TB(0) | CM(2)

僕の絵日記 008



あんまり自分で買ったりしないけど、
たまに食べたり飲んだりすると、妙に美味しく感じるもの。

・ポテトチップス(うすしお)
・マックシェイク(バニラ)

なかなか最強な組み合わせ。
ロングセラーにはロングセラーの理由がありますな。
[ 2007/07/27 17:37 ] お笑い:絵日記 | TB(0) | CM(0)

僕の絵日記 007



夏が嫌いです。
早く七月が終わらないかなぁと思ってます。
七月よりも八月を待望するのは、夏嫌いとしては矛盾してるのでは? と思うかもしれませんが、
そこら辺は細木カズコ的な理由によります。七月は駄目らしいよ、カズコ的に。

こないだカラオケ屋で「右から左へ受け流す歌」がどうしてカラオケに入っていないのか? と
店員に詰め寄るオバサン、というのを見たんですけど、あれってそもそもアカペラじゃないのかと。
というか、どうしてそこまでして、その曲をカラオケで歌いたいのか知りたい。はたして盛り上がるのか。
大抵、普通はカラオケでそういう曲を歌っても「何となくスベってるなぁ」みたいな空気になると思うんだけど。

何となくスベってるんだけど、盛り上げようという好意で歌ってる訳だから周りも「スベってるぞ」とは言えず、
本人が自分で気付くまで、ホントもう「あ、もういいや、テヘ☆」とか言って自分から曲を消すまで、
タッチパネルをタッチペンで押して今月の新曲を検索してる振りなどをしながら、
ひたすらに時が過ぎ行くのを待ってる訳ですよね。
「おお、椎名林檎、本人映像多いじゃん」とか言いながら、待ってる訳ですよね。

だからもう、本当に、そういうのは自分から空気を読むしかないというか、
只、ひたすらに、僕なんかは過ぎ行くのを待ってる訳です。
七月が過ぎゆくのを待ってる訳です。
右から左へ受け流す。
カズコ的に。
[ 2007/07/26 12:12 ] お笑い:絵日記 | TB(0) | CM(2)

crawl



別にどうって事ないのだ、世界は。
すべり台とブランコと、あとは小さな砂場しかない公園を抜けて、
錆びた柵に囲まれた変電所を過ぎると、僕らの小学校がある。
プール授業が嫌いだけれど、それとも今日でオサラバだ。

「よぉ、少年、明日から夏休みかぁ?」

小学校の近くに昔からある、小さな自転車屋。
六角レンチを持ちながら、油で汚れたツナギを着た、ヒゲさとしが声をかけた。
ヒゲさとしというのは、僕らが付けたあだ名だ。
正確に言うと、転校して行った、石田くんが去年の二学期に付けたあだ名だ。
ヒゲさとしは僕らの小学校の卒業生らしく、先生達はヒゲさとしに会うと「サトシ」と呼ぶ。
ヒゲさとしの本当の名前は、サトシなんだろう。

「夏休みは明々後日から」

「何でぇ、嬉しそうな顔してるから終業式かと思っちまったい」

「今日でプール授業が最後なんだ」

「へぇ、少年、プール授業が嫌いなのかい」

「嫌いだね、算数と理科と給食の時間より、ずっと嫌いだ」

そこまで言うと、今日の給食の献立を思い出して、僕は憂鬱になった。
今日の献立は「黒コッペ」と「春雨サラダ」と「大学イモ」に「玉子スープ」だったはず。
この玉子スープが厄介で、玉子スープなら大人しく玉子だけを入れておけば良いものを、
何故か、僕らの小学校の玉子スープには、シイタケが入っている。

「何でぇ、給食は嬉しいだろうがよ、俺の子供の頃なんか……」

「シイタケは大問題だよ」

ヒゲさとしは遠い目で何か言おうとしていたけれど、
僕のシイタケ発言を聞くと、六角レンチで自分の肩を軽く叩きながら言った。

「馬鹿たれ、シイタケは体にいいんだよ」

「へぇ、シイタケに入ってる栄養素って何なの?」

「へ? そりゃあ、お前、アレだよ、あ~、ビタミンCとかだよ」

ヒゲさとしは自転車に向き直ると、自分から話しかけたくせに、
「いいから学校行け」と言って、六角レンチを持った手で、僕を追い払った。
ヒゲさとしはヒゲのせいで歳を取ってるように見えるけれど、多分まだ若いんだと思う。
これからもシイタケなどを食べて、健康の維持に努めて欲しい。

プルルルルル。
ポケットの中でPHSが鳴った。
僕はポケットに手を入れてPHSを取り出す。
母さんからだ。

「もしもし? あんた家に水泳キャップ忘れたままだけど、どうすんの?」

僕は片手に持っていた紺色の水泳バックを見る。
中を開けると、バスタオル、着替えのパンツ、ロートこどもよう目薬、が入っている。
ちなみに海水バンツは当然、既にジャージの下に身に付けている。
そして水泳キャップだけが、確かに入って無い。

「ああ、忘れた」と、僕は見たままの事を言った。
母さんは少し苛々した口調で「それで、どうすんの?」と言っている。

「取りに戻るよ」

「あんた、もう遅刻でしょ」

「大丈夫、今から走って戻るから」

PHSの通話を切ると、僕は今来た道を、今度は逆に走った。
ランドセルの中で教科書が、ゆさゆさと揺れた。
変電所が見えて、公園を通り過ぎる。

プールなんか大嫌いなんだけど、
大嫌いな事の為に、わざわざ来た道を戻るのは、何故だろう?
公園のブランコが小さく「キィ」と音を立てて揺れた時、何だか急に馬鹿らしくなった。

僕は足を止めて、やはり今戻って来た道を、逆に歩き始めた。
水泳キャップなんて別に要らないんじゃないか。
プールに入りたくないんだから。

このまま歩いたら遅刻だろうな。
確か今日の体育の授業は一時間目だから、プールに入らなくて済むかも。
そもそも学校に行かなければ、給食の玉子スープを飲む必要だってないんじゃないか。

「よぉ、少年、今日はよく会うなぁ」

自転車のタイヤを回転させながら、ヒゲさとしが声をかけた。
ヒゲさとしは汚いツナギの胸ポケットから器用にタバコを一本だけ取り出すと、
それに火を点けながら「少年、これ今日は遅刻だなぁ……」と笑った。

「どうって事ないよ、別に」

「おお、強気だな少年、それともプール授業が嫌なのかね」

「別に」

別にどうって事ないのだ、世界は。
嫌な事を我慢してまで、無理に学ばなければならない理由が解らない。
どうせ大人になったら使わないような事ばかりなんだろう。
算数だって、理科だって、玉子スープが食べられなくたって、死ぬ訳じゃない。

「泳げなくたって死ぬ訳じゃないからね」

「ほぅ、よく知ってんな、少年、そりゃもっともだ」

ヒゲさとしは笑いながらタバコの煙を吐き出した。
煙は蒸し暑い夏の空気の中に溶け切らず、地面に垂れるように流れた。

「泳げなくたって自転車があれば、何処へでもスイスイ行けるさ」

「へぇ、いい事言うな、少年、一台どうだ」

「自転車なら持ってる」

僕は自転車が好きだ。
ヒゲさとしの店で買った、五段変則の黒い自転車だ。
それさえあれば、一人でだって、何処へだって行けるんだから。

「でもなぁ、それはどうかねぇ……」

不意に、ヒゲさとしが言った。

「自転車なんてなぁ、少年が思うほど万能なモンじゃないぜ。
 そりゃ俺は自転車を愛しているがね。
 でも、そいつを愛してるのと、そいつが完璧ってのは、少し話が違うんだなぁ」

ヒゲさとしにしては長い台詞を、ヒゲさとしは言った。
ヒゲさとしはタバコの煙を眺めながら、何故か少し笑って「いやホント」と付け加えた。

「少年、お前がさぁ、海を渡りたくなった時は、どうすんだい?
 お前さんの自転車は、お前さんを海の向こうに連れていってくれると思うかい?」

「自転車で海を泳ぐのは無理だ」

「よく知ってるじゃねぇか、ははっ。
 そうさ、自転車は海を泳がない、じゃあ、少年、お前さんはどうする?
 海を渡るのを諦めちまうかい? それとも、もっと別の、潜水艦でも手に入れるのかい?」

「別に、船に乗ればいいんじゃない」

ヒゲさとしは、やっぱり笑って「そりゃ、いい考えだ」と言った。
僕はヒゲさとしの吐き出すタバコの煙を眺めたけれど、風に流れてよく見えなかった。
ヒゲさとしは「船ね……」と言ったきり、何も言わなかった。

別にどうって事ないのだ、世界は。

僕らは自由なはずだ。
僕らが学ばされる事なんて、大人になれば役に立たない事ばかりだ。
だって大人達は、自分から、何時だってそう言ってる。
そのくせ僕らには「勉強は大切だ」なんて事を偉そうに言ってくるんだ。
自分達はシイタケを平気な顔で残してるくせに。

「なぁ、少年」

ヒゲさとしは僕も見る訳でも、空を見る訳でもなく、
只、何となく何処か上の方を眺めながら、独り言のように言った。

「俺は自転車を愛してるよ。
 だから、もしも、俺が海を渡りたくなった時には、
 自転車で海を渡ろうなんてしないし、代わりに船に乗ろうともせんよ。
 きっと俺は自分の力で泳ぐよ」

遠くから、風に乗って、小学校のチャイムの音が聴こえた。
小学校の外で聴くチャイムは、妙に間延びした、変な音色だった。
タバコを足で踏むと「あ~あ、少年、遅刻だな」と言って、ヒゲさとしは笑った。

「麦茶でも飲んでっか?」

その日、僕はプールの授業を休んだ。
三時間目が始まるまで、僕はヒゲさとしの店で、自転車の修理を見てた。
呑気な顔で教室に入ったら、先生に怒られた。
怒られた上に給食の時間、玉子スープに大量のシイタケが入っていた。
家に帰ってからは、先生以上に、母さんに激怒された事は言うまでもないだろう。

ヒゲさとしが話に巻き込まれると悪いので、
僕はプールの授業中、ずっとトイレに隠れていた事にした。
どうしてトイレに隠れていたのかと問われたので、胸を張って言ってやった。

「僕はプールが嫌いなんだ」

それで僕は夏休みの間、臨時のプール学習に参加しなければならなくなった。
異議を申し立てる気が起こらなかったのは、面倒くさかった事もあるし、
あの時の、ヒゲさとしの台詞の意味が、よく解らなかったせいでもある。

夏休みに入り、毎日、水泳バックを持って小学校に通ったけれど、
自転車屋の前に、ヒゲさとしの姿はなかった。

ヒゲさとしが長年連れ添った奥さんと別れたらしいと知ったのは、
そのずっと後、大人達の噂話からだったろうか。

それで僕は今日も、クロールで水を掻いている。
[ 2007/07/25 16:03 ] 小説 | TB(0) | CM(2)
目次
★説明




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★長編小説














★短編






★お笑い








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