VOSTOK8 blog - Astronaut' Monologue TOP  >  2008年07月



今日で七月も終わり。
言わずと知れて、月日の流れは早い。
夏が好きな人には申し訳ないけれど、僕はこの季節が嫌いだ。
世間中が何となく浮かれている雰囲気も、何かが始まる予感に胸を躍らせている空気も、本当に嫌いだ。
誰に向けられているという訳でも無い、この漠然とした、フワフワとした期待感が嫌いだ。

それでも、行きもしない夏祭りだとか、見もしない花火大会だとかの噂を聞いたり、
車の中が異様に暑かったり、何処からか虫が鳴いていたり、午前中から小学生が外で遊んでいたり、
フジの27時間テレビだとか、ラジオ体操のカードだとか、ワタアメの袋だとかを見ると、少し楽しい気分になる。
自分とは関係の無い世界だ、と思いながらも、少し懐かしくて、少し羨ましい気持ちになる。

嫌いという事は、何処かに原因があるのだ。無関心なのではなく、嫌いなのだ。
もしかしたら好きなのかもしれなく、子供の頃を思い出すと、僕の記憶の風景は夏ばかりだった。
近所の公園で友達と遊んだ日も、自転車で遠くに見える記念塔を目指した日も、サッカー少年団の試合も、
汗かいて飲んだスポーツドリンクの味も、すぐに思い出せるそれは、全て夏の記憶だった。

嫌いになると、遠ざけてしまうのだ。好きだったから。
考えてみると、確かに僕にはそういう習性がある気がする。食べ物の好みにしたってそうだ。
子供の頃、僕は結構、そばが好きだった。
子供にしては渋い趣味だが、ハンバーグより、カレーより、スパゲッティより、僕はそば好きな子供だった。
外食する時も、満面の笑みで「そば!」と言うような、ちょっと変な子供だったのだ。

ところが、ある日、僕は新聞で「そばアレルギーで亡くなった子」の記事を読んだ。
その日以来、今日まで一切、そばを口にしていない。食べられなくなったのだ。嫌いになったのだ。
大人が聞いたら「何で?」と思うだろうけれど、多分、その亡くなった子に気持ちを重ねすぎたのだ。

夏が嫌いならば、嫌いになった理由があるのだろう。
別に思い出そうとは思わないし、今すぐ解決しようとも思わないが、きっと昔は好きだった。
夏が好きだと言う人を見ると「そうか、気持ちは解るぞ」という気分になる。夏には良い所も沢山あるのだ。

明日から八月が始まる。
夏の良い所を、少しでも感じられると良いなぁと思う。
[ 2008/07/31 14:54 ] 雑記 | TB(-) | CM(-)

your step means my setup



「compression internal organs が値上がりするんだって」

「へぇ」、と呟いたまま、サワコの言葉を遮るように、僕は歩き始めた。太陽は地面から垂直に伸びて、真上から直射的な熱風を、僕等に吹き込んでいる。噂話は嫌いだ。誰も得しないから。真実は大体の場合、真実以外にはならない。なってはいけない。ところが噂話は真実をいとも簡単に嘘に変えて、悪ぶる事も無く他人のフリをしている。誰にも責任が降りかからないのは丁度、真夏の砂浜で抱き合う恋人同士みたいなもんだ。
「責任は降りかからない。迷惑はかかる」
「それ何の話?」
「別に」
グランシオ・スワップから南南西に伸びる国道を時速120㎞で進んでいたら、やがて海が見えるだろう。
そういう話だ。要するに「実体の無い実体が、真実に成り代わっているって話さ」
「よく解んないな」サワコは波音に耳を傾けて、もう僕の声なんて聞いちゃいなかった。僕だって同じだ。

よく解んない事柄に、何とか意味を与えながら、わざわざ此処までやって来たんだろ。
今更、失った荷物と、手に入れた荷物を、両天秤に架ける行為に、大層な意味なんてあるか?
「無いね。何も無い」
「何の話?」
「この言葉に意味なんて無いって話」
言葉は虚構だよ、サワコ。ならば僕等の生死も同じ事。実体の無い実体が、真実に成り代わっている。
エナメル質に濡れた海と、無色透明の空気。指に触れて感じるサワコの肌。何処にも差異なんて無いのさ。
それなのに僕にとって、サワコが唯一絶対的に、サワコで在り続ける理由は何だと思う?
認識しているという事。欲求しているという事。それを疑ってしまうと、全てが成立しなくなるという事。
「笑うって行為に、よく似ているな」
「はははっ」
恐らく意味も解っていないのに、サワコは短く笑った。眼前に広がる、静かな海を眺めたまま笑った。
意味なんて無い事柄が欲しいよ、サワコ。認識できない欲求。僕は、それが欲しい。何をするにも情報が多すぎるんだ。情報に伴う理由が必要になる。理由は噂話に変わり、真実は嘘に変わる。誰も得なんかしないよ。
宛を失くした迷惑だけが残るだろう。誰に? ――僕等の知らない誰かに。

「僕等の知らない誰か、ね」

知らないという事は、存在しない事と同じか? 同じでは無い。
見えないという事が、存在しない事と同じでは無いように。太陽が放射したガンマに、誰も気付かないように。
サワコの悲しみに、僕が気付かないように。黒点が発生し、質量が増加し、紅炎が噴出したって気付かない。
惑星が飲み込まれる最期の瞬間に、僕とサワコは悟るだろう。

「compression internal organs が値上がりするんだって」

「へぇ」、と呟いたまま、先程と同じ会話を繰り返した事に、僕は気が付いた。
生命を維持する身体機能を、たった一つの臓器に圧縮し、半永久的に生きる事を、最初に望んだのは誰だ?
だけど、それは噂話だよ、サワコ。誰が最初に望んだとしても、宛を失くした迷惑が残るだけだ。ところが誰もが半永久的に生きるなら、誰もが半永久的に死なないという事。宛が在るという事。だとしたら、それは。

「……それは、誰の為の命なのかしら」

グランシオ・スワップの空は青く、土は赤かった。
サワコが太陽を見上げて、一歩踏み出した。崖の上の小さな石が弾かれて、海に落ちた。
何にも意味の無い事で笑いたいんだよ、サワコ。喩えば明日、死んでしまう我が身だったとしても。
僕等の全てが、もう手遅れだったとしても。「月が昇るまで生きていよう。それを見たら、次は太陽が昇るまで」

瞬間、宙ぶらりんの片足を止めたまま、サワコは笑った。
何となく、僕も笑った。
[ 2008/07/29 10:20 ] 小説 | TB(-) | CM(-)

the moon is like a white ball.



僕が夏を好きになれないのは、君に出逢った季節だからでも、君が消えた季節だからでも無いよ。
只、太陽が、その熱風が陽炎を生み出して、僕等の進むべき道を掠めてしまうからに他ならない。
少年が白球を追いかける。いとも健全に。狙いを定めて振り抜く瞬間、白球は青空に向かう。
君の名前を思い出すより先に、君の顔を思い浮かべるよ。色白なライン。白線。進入禁止。
大きく曲がって三塁線。ホームベース。草。土。疾走る。疾走る。
無音。歓声。転がったままのバット。
校庭には水が撒かれている。回転するスプリンクラー。世界は少しだけ温度を下げる。

空に月が浮かぶ。
[ 2008/07/27 17:43 ] 小説 | TB(-) | CM(-)

momentary inexperienced despair



Honey、それでも僕は、虚しさの中で言葉を重ねている。
存在すると思えば存在し、それ以外ならば虚像だ。点在的に言葉を垂らし、連続的に捉える事が出来ない。
どれだけ話しても、真意なんかは伝わらない。爆音的なミュージックを奏でたいけれど、僕には無理なんだ。
ほとほとウンザリだよ。初めから期待なんかしていなかったんだ。真実は真実のまま。虚偽は虚偽のまま。
どちらに転んだって道なんか無いんだ。僕が進んだ後を、勝手に舗装しちまうんだろう。草花は咲かない。
無言と盲目の果てに理解など存在しないならば、何を聴けば良い?何を見れば良い?そしてこれ以上、
何を話せば良いって言うんだ。想像以上に無理解だよ。そして自暴的だ。無駄な禁煙的社会だ。
反吐が出るよ。それでも反吐を出せと言う。それがお前の塊だと言う。だから、僕は塊を吐き出す。

Honey、それでも僕は、愛しさの中で生きてみたいと思う。
だから全てが嫌いだ。猜疑的で、虚偽的だ。僕自身もイミテイションだ。本当を、探し続けているという訳だ。
白線が引かれた校庭を、走り抜けていく女の子を見たよ。踏み切って、跳んで、弾けるように、着地したんだ。
砂の上に真実は在ると思うかい?僕は在ると思う。飲まれて消えて、跡形さえ無くなってしまうけれど。
知った顔して近付いて来る奴ほど、注意しなければならない。奴等は結局、何も解ってはいないんだ。
信じる事や、諦める事を、他人に求めてはいけない。だって何時だって、それは僕が決めるべきなんだから。
積み重ねた関係ほど、多くを見誤る関係は無い。灰色の銃口を向けられても、喜んで舌を差し出すよ。

Honey、それで僕は、一体何を信じれば良かったんだと思う?
詰まらなくて愚かだよ、人生なんて。素晴らしくて確かな感覚など、一瞬の中にしか存在しないんだ。
だから踏み切る瞬間、跳ぶ瞬間、弾けるように着地する瞬間を、僕は覚えていたい。それは僕のモンだから。
解り合えると思っていたよ。だけれど無理だ。それでも諦めようとしないならば、もう生き残る術は一つだろう。
瞬間を笑うよ。僕だけの瞬間を。踏み切る瞬間を。飛び越える瞬間を。忘れて往く瞬間を。思い出す瞬間を。
花が咲く瞬間を、まだ僕は見た事が無いよ。優しい歌を唄ってみたいんだ。ミュージック。
嘘だらけで、隙だらけで、だけれど最後には笑えるヤツだ。僕だけの歌なんだ。

Honey、こんな僕に、君は何時の日か、呆れてしまうだろう。
銀色の水が波を打って僕を出迎えても、僕は腹の底から信じちゃいないんだ。
僕は君が思うより、ずっと世界が嫌いなんだ。汚いんだ。拙くて幼いんだ。何も面白くは無いんだ。
それでも君が好きなんだ。君に触れてみたいんだ。君に笑って見せて欲しいんだ。そして、それだけなんだ。
その瞬間は、ちょっとだけ嬉しい気分になるんだ。僕だけの歌を、聴かせてみたくなるんだ。
[ 2008/07/25 06:06 ] 小説 | TB(-) | CM(-)
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