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札幌を笑わせる男

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その小さい男と出逢ったのは、もう何年前になるだろう?
その小さい男と別れた日の事は、よく覚えている。
気が付けば、もう三年以上前の話だ。

春の日。
あの朝は、季節はずれの雪が降っていた。
小さい男は「笑いに携わる構成作家になりたい」と言った。

僕は、あの小さい男を手放すのが、すごく嫌だったな。
もしも自分に弟がいたならば、あの小さい男とのように接したに違いない。
あれから三年経って、小さい男は一人、今も東京で頑張っている。
生意気にも、夢だった構成作家として。

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■邂逅

さて、本日の雑記は少し長くなるのである。
もしも僕の雑記を細かく読んでくださっている人がいるならば、ピンと来ただろう。
上の「小さい男」というのは、構成作家「佐久間トーボ」の事だ。

知らない人は、そのままで構わない。知ったからといって別に得する情報でもない。
只、僕がお笑い関連のコラムを書く時には、大体名前が出てくる。
(その大半は、僕からの、彼に対する罵倒と苦情である。)
まぁ、それだけの話である。

しかも本日の主役は、彼では無い。
本日の雑記の主役は、彼よりも若い、一人の大きい男である。
僕が、その大きい男と出逢ったのは、一年前だろうか。
いや、多分まだ一年も経っていない。

大きい男は、その年の春に高校を卒業したばかりだった。
ラグビー部出身の身体は丸みを帯びながらもゴツゴツしており、
そのシルエットは機動戦士ガンダムに出てくる『ドム』に酷似していた。





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【MS-09 ドム】





ドム(大きい男)は、僕に言った。
「俺、将来、お笑い芸人になりたいんです」
僕は鼻で笑った。
それは若者特有の、夢語りらしい、夢語りだったからだ。

相方は高校時代の同級生らしく、
舞台に立った経験はあるのかと訪ねたら、
高校時代に学校祭で……というような答が返ってきた。

一応、週に一回、お笑いの学校のようなものに通っていると言われたが、
どうにも真剣に芸人になりたいと思っているとは感じなかった。
週に一回、その学校に通えば必ず芸人になれる、という訳ではなかろうに。

僕には、すぐ傍で「佐久間トーボ」を見てきたという自負があった。
本当に笑いの道に進む人間の覚悟、というのを肌で感じてきた。

だから鼻で笑ったのだ。
お前らの覚悟など、まるで夢物語だと。

ネタは書いてるのかと訪ねたら、どうにも歯切れが悪い。
それで僕は、まず『その場で即興のコントを作る』という遊びを仕掛けた。
大きい男に好きなお題を出して貰い、僕がその場で即興のネタを考える。
ネタといっても、おおまかなスケッチのようなものだ。
それを考えたら、その場で口頭で発表する。
発表したら、次は交代する。

一応、曲がりなりにも僕は文章書きなので、この手の遊びは全く苦ではない。
驚いたのは、大きい男も、それなりのネタを考えた事だった。
それで僕は、この大きい男に興味を持った。
彼の名前は「太一」だった。


名前も大きかった。

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■修行

最初の内は、即興で大喜利を仕掛けてみたり、
ネタ本を考える遊びをしたり、僕が台本を書いてみたりもした。
割と淡々と、時間は過ぎていった。

去年の秋口くらいから、太一と相方は、本格的に行動するようになった。
自分達でネタを書いて、練習して、M1の予選にも挑戦してみると言う。
コンビ名がまだ無いというので、何気なく「考えてやろうか?」と言った。
僕は、こういう場面では、別に自分の事じゃなくても関わりたくなるのだ。

太一は至って普通の感じで、いわゆる「あ、マジすか」くらいの感じで返事をした。
「別に考えてくれてもイイスけど」くらいの、軽く上から目線の感じだった。
まぁ、太一という男には、稀にこういうところがあるのだ。

僕はモノの名前を考えるのが好きなので、頭をひねった。
太一のコロコロとした感じをコンビ名に活かせると良いだろう。
可愛らしくてインパクトのある、それでいて覚えやすい言葉の響き。
こちとら言葉のプロである。(金もらってねーけど)
僕は太一に言った。

「ジーパン好き?」

「……まぁ、普通に好きッスけど」

「ジーパンに使われる染料は、インディゴ・ブルーってんだよ」

「……はぁ」

「野菜、好きか?」

「……いや、んー、嫌いじゃないッスけど」

「まぁ、普通に好きだよな」

「……はぁ」

「んじゃ、コンビ名は【インディゴ・ブロッコリー】で」

「は?」

只、この段階で、まだ僕は彼等のネタを、ちゃんと見た事が無かった。
それで「一度、目の前でネタを見せてくれ」と言った。
ネタ見せてくれたら名前を使っても良いよ、と。
まぁ、非常に偉そうな言い分ではある。

とは言え、中々ネタを見せてもらう時間がなく、
彼等としても、無理にネタを見せてまで付けたいコンビ名でも無く、
それで彼等は、件のM1予選には、まるで違うコンビ名で挑戦する事となった。
(それは今考えると、ちょっと恥ずかしいコンビ名だった)

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■始動

冬が始まる頃だったか。
太一が「ネタを見て欲しい」と言ってきた。
それで僕は、初めて彼の相方と会い、しっかりした彼等のネタを見た。
それは五分程度の漫才だった。

広い、音を消した静かなカラオケ屋の一室で、
大きなソファに座り、腕組みをして、僕は彼等の漫才を見た。
端から見ると「素人のくせに何様なのか」と言われてもおかしくはない。
しかし僕は、僕なりに真剣に、彼等の漫才を見た。

見終わった後、僕が最初に言った台詞は何だったか。
とりあえず僕は、僕の予想が大きくはずれていた事を知った。
この時点で、僕は彼等の力量を舐めていた。
だから、僕は言った。

「東京に行けば?」

彼等は、僕の発言に、驚きながらも、喜んでいた。
しかし彼等は、すぐに東京に行くような無謀な真似はせず、
札幌で力を付けるべく、札幌吉本のオーディション・イベントへの挑戦を始めた。

最初は素人(見習い)から始まり、
勝ち抜くたびに白帯、黒帯とステージが上がり、
黒帯のステージで優勝すると吉本所属のプロ芸人になれる。
そういうイベントだった。

それは奇しくも、数年前――。
僕と上京前の佐久間トーボが一度だけ挑戦し、無残に散ったイベントだった。

結論から言おう。
インディゴ・ブロッコリーは今年の春、
僅か数ヶ月で黒帯ステージでの優勝を果たし、プロの芸人になった。

まぁ、まだまだ素人に毛が生えたようなモンだろうが、
いまや札幌吉本のサイトにも、wikipediaにも名を連ねる、プロの芸人だ。
ある日、プロの芸人になった太一に向けて、僕は言った。


「何時かは、佐久間トーボと仕事をする日が来るかもな」


不可能な夢じゃない。
佐久間トーボが構成した舞台で、インディゴ・ブロッコリーが漫才を見せる。
まるで不可能な夢じゃないのだ。
太一は、相変わらずの態度で「あ、そうすね」と言った。
僕は小さく、笑った。

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■現在

先日、太一が「9/13にイベントやるんですけど」と、
何か一応それなりな感じで僕を誘った。
チラシを見る。

オレンジ色の綺麗な二色刷り。
文字が目に飛び込む。
……ん?

「ゲスト:ダイノジ
 ゲスト:インディゴブロッコリー」

思わず太一に訪ねる。
「……ダイノジさんと仕事すんの?」
太一は呑気な声で答える。
「そうですけど?」
僕は静かに興奮した。

東京に行った僕の後輩――。
佐久間トーボは、ダイノジさんトコで構成作家やってんだよ!
お前らがダイノジさんと仕事するって事は、もしかすると佐久間トーボも……
僕は携帯電話を手に取ると、すばやくメールを打った。
すぐに返事。佐久間トーボ。

「ああ、時間あれば、その日に合わせて帰ろうかと思ってたんですよ。
 多分、また構成やるかもしれないんで」

……の、呑気!
何だ、俺の周りの後輩、呑気者だらけか!
もっとこの件に関して興奮しても、もっと食い付いてきても良くないか!


――その瞬間、きっと僕は笑っていたんだ。








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佐久間トーボが構成した舞台で、
インディゴ・ブロッコリーの漫才を見る。
僕にとっては、これほど贅沢な事は、そう無いよ。

札幌を、笑わせる男。

9月13日を忘れずにいよう。
[ 2009/07/24 11:38 ] 雑記 | TB(-) | CM(-)

Other AnOther

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其れで、僕は走り出した。
理由なんて無い。見当たらないし、考えたくもない。
面倒な方程式に答える暇があるならば、靴紐を固く結んで、一歩先へと進むよ。
僕は一足、真っ黒なオールスターを手に入れて、履き潰す為に履いた。
其れとまるで同じ理屈で、また本日も。

「言葉を重ねている」

という訳だ。
何にも理由なんて無い言葉をね。
両手を大きく振りながら、ストライド走法で進む途上で、あれやこれやと考えるか?
考えはしない。只、何時だって瞬間的な虚無が、僕を襲うんだ。
何で今、僕は走っているのだろ?

「止まらないからさ」

何が?
止まらないのか、止められないのか、止められないのだとしたら、何が?
血液と時間は逆流する事無く一定のリズムを刻み、まるでほとんど音楽のようだけれど、音楽では無い。
同じように欲情と扇情が僕を走らせ続けるけれど、欲しいのは刹那的な静寂なのだ。
一瞬間、闇。淡々と、光。

ようこそ、僕よ。
其れから、もう決して僕では無い、僕よ。
[ 2009/07/21 09:40 ] 小説 | TB(-) | CM(-)

お前の友達の友達は今、ドラクエ休暇中。

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えー、世間はすっかり夏本番という事でね、みなさんどうですか。
元気にニンテンドーDSとかやってますか。ドラクエですか。
「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」つってね。
それをやっとる訳ですか。どうですか。

国内出荷本数が300万本を突破ですって。
300万本RPGだわ。これは普通にスゴイ事です。
今のご時勢、300万人が同じ物を買うってのが、まずスゴイ。
何でもかんでも焼いたり配ったり落としたりのご時世に、300万本。
気が付いたら日本全国、ドラクエまみれですわコレ。

皆さんドラクエやりまくってるんですかね、コレね。
ドラクエ休暇が欲しいよーつって。
ほんと。ね。





は、働けよ!





平和だな!何なんだよ!
いや平和なのは良い事なんだけれども。
ドラクエ休暇ってすごいな。

「ドラクエやるから休みたい」

そんなもん完全に小学4年生の言い分ですからね。
小学校低学年から高学年にかけて芽生え始めた、新たな自我の欲求ですからね。
すごいなドラクエ休暇。そら日本もGDPで中国に抜かれるわ。

不況だからこうなのか、こうだから不況なのか。
卵と鶏の関係よろしく、その真実は解らぬけれど、とにかく日本が世界で二番目の、
アメリカに次ぐ経済大国だ、なんて呼ばれていた時代は、もう終わる。
それが悪い事なのかは解らぬけれど、とにかく終わる。

経済格差は広がる一方だけれど、
例えば今、スクウェア・エニックスは確実に儲けているのだろうし、
ドラクエ休暇をとって仕事を休んでいる人達は、あまり儲かっていないかもしれない。
そう考えてみると、事態は結構、単純だ。

多くの人達が、自分を省みて「このままではいけない」と思っているだろう。
それでドラマ「ROOKIES」などを見て盛り上がっているように見えるのだけれど、
実際の生活態度は「ROOKIES」第一話のようだ。やっぱりドラクエ休暇が欲しいのだ。
夢にときめき、明日にきらめくんじゃなかったのか?とツッコミたくもなるが、
ドラマはドラマ。リアルとヴァーチャルをごっちゃにするのは、きっと危険なのだろう。
……などと、熱く拳を振り上げて日本の行く末を嘆いたところで、はたと気付く。

え、ドラクエ休暇なんて本当に存在してんの?

僕、そんな休暇をとってる人に会った事ないんですけど。
いや、中には実際に、そういう理由で会社や学校をサボった人も、
そりゃ存在するだろうけど、だけどコレ半分、都市伝説みたいなもんですよね。
いや、だって会った事ないもん、マジで。

「ドラクエ休暇」という単語を見て、多くの人達が、
「マジかよ!いいな!ありえねー!」と思ったり、羨ましがったり、笑ったりしたけど、
「俺達、ドラクエ休暇中です」という集団には、実際に出逢った事がない。

実はコレ、本当は存在してないんじゃないか。
発達したメディアに踊らされていたのは、俺達の方なんじゃないのか。
そうか、そうだったのか。俺の愛した国・ニッポン。
まだまだ捨てたもんじゃない。
太陽がギラギラしやがって、やけにまぶしいぜ。

安心した俺は、辞めた煙草の代わりに、
手元のニンテンドーDSを手に取ると、小さな電源スイッチに触れた。
画面一杯に映し出される「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」のオープニング。

よーし、今日はドラクエ休暇をもらって、一気にコイツをクリアしちゃうぞ!

※オレンジは「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」を応援します。
--------
P.S(ポロリもあるよ!水泳大会)

Twitter、はじめました。

[ 2009/07/16 21:53 ] 雑記 | TB(-) | CM(-)

I will know it tomorrow.

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其れは 其れは

其れは 何処から始まり 何処で終わる?

知る訳ないよな そんな事なら 生まれる前から 知らなかった


泣きたくなるような 朝だよ

吐きたくなるような 昼から

抱きたくなるような 夜を経て

今日 に辿り着いたのだから

其れで 僕等は また泣いた


名前も知らない少女の

淡い影が浮かんでいる

夜露に浮かぶ薄い影だ


少女は周りを見渡した

下品な騒音 と 雑音にも似た会話

安いとも 高いとも 判断の付かない 夜の性の相場

全く同じ夜に 無償の愛が まるで損得の無い 液体を滴らせている


少女は何だか

意味が解らなくなり

少女は何だか

価値が解らなくなり


傲慢な理由と

純粋な目的を

酷い安値で売り渡し

代わりに 虚無を手に入れた


其れは酷く陳腐で

幼稚な虚無だった

持て余したから 少女は消えた

世界は 少女に 何をしてあげたら良かったのかね?


僕等は何にも知らないよ

誰が成功で 誰が失敗なのかさえ

其れで仕方なく 知った顔をして歩いている


選択の意味を

才能の意味を

上昇の意味を

下降の意味を

地位的名誉の意味を

社会的貢献の意味を

金銭的成功の意味を

身体的欲情の意味を

其れ等の意味と 其の価値を


(少女が消えてから三十三日後 変わり果てた少女の画像が ネット上で話題となった)

(誰もが 画像を見て 目を背けたり 鼻で笑ったり 噂話にした)

(誰もが 知りたがっているだけだった)


其れは 其れは

其れは 何処から始まり 何処で終わる?

知る訳ないよな そんな事なら 生まれる前から 知らなかった


泣きたくなるような 朝だよ

吐きたくなるような 昼から

抱きたくなるような 夜を経て

今日 に辿り着いたのだから

其れで 僕等は また泣いた


(I will know it tomorrow.)


心配するなよ

其れでも 明日も 僕等は一緒だ
[ 2009/07/12 10:38 ] 詩歌 | TB(-) | CM(-)
目次
★説明




★短編






★長編小説














★短編






★お笑い








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