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銀河

292.jpg

くんと匂い立つような死だ。

2009年は天才達にとって悲劇的な一年だった。
とりわけロック・スター達の死が僕達に落とした影は大きく、
その鬱蒼とした平べったい影の中で、僕達は居場所を見失ってしまった。
影は広く、深く、終わりなど無いように見えるが、遠くには点々と何個かの光も見える。
僕達は光を(何故だか)追い求めなければならず、追う為に追い続けなければならず、
そう、この大きな影から這い出る為の手段として、小さな光を追い求めた。

昨夜、出口の見えた2009年の終わりに、また一人、ロック・スターが死んだ。
一年前の同じ日に、AV出身の元人気タレントが死んだ事を、僕達は忘れかけていたが、
脳味噌の奥に指を突っ込まれたみたいに、似たような記憶が穿り返されて、こう思った。
悲劇だ。呪われた一年だ。影の中で影を見るような行為だ。死は音も無く近付き、そして――

「自分が何をするべきなのか、解らないような気分にさせる。」

隣で真っ赤なギターを弾きながら、恋人が声を発した。全く意味不明の台詞だった。
恋人は退屈そうに六弦を弾くと、ベッドに転がり、低い天井を見上げた。
明らかに低いのだが、相変わらず手を伸ばしても届きはしない。
天井の向こうに闇は広がっているが、僕達とは関係ない出来事のように思える。

「しかし、それは、すぐそこに在る。」

音の無い――何も無い何かが、佇んでいる。
昨夜のロックスターの死を、僕は恋人からのメールで知った。
言葉に音は無く、色も、熱も無く、僕の感情に意味があったとも思わない。
只、濃厚な死の芳香が、一瞬、僕達を誘った。

意味なんてないよ。
宇宙は広大だ。摂理に抗う事は出来ない。
それでも僕達は光を求め、光を求め続けてきた。
自分に何も出来ない事ではなくて、意味が無い事だけが怖い。
求める事は出来る。しかし求め続けてきた事に、意味が無くなる事は怖い。

「それが君の夢ならば、そんな程度の夢なのよ。」

目覚めて終わる程度の。
死に打ち克つ事の出来ぬ夢なら、何処で終わっても構わない。
僕が死んでも、尚残る何かを、僕は求め続けているのだ。それが僕の――

「君だけが見る夢だわ。」

くんと匂い立つような死だ。
引かれるな。誘われるなよ。光も抜け出せない、重力の闇だ。
今、僕達に出来る事は存在して、意味なんか無くても、確かに存在して。

恋人は起き上がると、再びギターを、今度は優しく奏でた。
小さな声で歌い、僕を見て笑った。
2009年は天才達にとって悲劇的な一年だった。
とりわけロック・スター達の死が僕達に落とした影は大きく、
その鬱蒼とした平べったい影の中で、僕達は居場所を見失ってしまった。
それでも僕達が居場所を追い求める事に変わりは無い。
重力の淵、小さな惑星、その片隅で。

「命は歌う。」

ロック・スターは死んだ。
その事実に対して、僕達に出来る事なんて決まっていて。
要するに恋人は、それに従った。
歌える者は歌い、描ける者は描き、紡げる者は紡ぎ、生きる者は生きる。

生きる者は、生きる。

それで僕は言葉を繋ぎ、この小さな物語を書いている。
真夜中、二時過ぎ、白い息を吐きながら。
銀河の、銀河の、片隅で。
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[ 2009/12/26 02:02 ] 小説 | TB(-) | CM(-)
目次
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