VOSTOK8 blog - Astronaut' Monologue TOP  >  2010年03月

草食男子的思考

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 メリル、僕達の待ち合わせ時間は、君の都合通りだよ。
 メディアが草食男子などという奇妙な造語を考え出して久しいが、本物の草食男子なんて存在しないんじゃないかと、僕は思うよ。もしくは少なくとも、その言葉が生まれた段階で、そんな奴は存在しなかった。非実在青少年的発端だよ。それは「在る」と言われれば「在る」し、等しく「無い」と言われれば「無い」。今年の流行色やブランド品みたいに実体の無い、誰が仕掛けたのかも解らない噂が実体化して居る。
 1947年6月24日にケネス・アーノルドは世界で初めて空飛ぶ円盤を発見したが、彼は円盤型の物体を見た訳じゃない。只、彼は彼が見た三日月型の物体を「まるでSaucer が水面を撥ねるように、空中を飛んでいた」と表現しただけで、Flying Saucer を見た訳じゃないんだ。ところが新聞に Flying Saucer、要するに「空飛ぶ円盤」という単語が躍った途端に、円盤状の飛行物体を発見する輩が続出したのは何故だと思う? ケネス・アーノルドが見たのは「三日月型の飛行物体」だったのに? Unidentified Flying Object は存在するが、Flying Saucer は存在しない。同じように非実在青少年は存在するが、草食男子は存在しないだろう。単なる妄想だよ、君達の。理想を手に入れる為には、立場を向上させなければならない。立場を向上させたなら、誰も世界が平等なんて言わなくなるよ。君達は「それ」を隣に連れて歩きたかったのだろ? 僕達は妄想に付き合わなければならない。
 メリル、愛想笑いは悲しいな。だから僕はそれを演じなければならなくなった。全く馬鹿げた日常だろう。演じる必要なんて無かったと思うかい? 君が化粧をしたり、上下揃いの下着を身に着けたり、仕事での発言力を強くしたりするように、僕達の中の何割かは演じなければならなかったのさ。否、もしかすると演じる必要は無かったのかもね。アダムスキーは生涯で25回もの宇宙人との遭遇を経験し、円盤型の謎の飛行物体の撮影に何度も成功した。彼を嘘吐きだと罵るかい? それは難しいな。現在、世の中に存在する草食男子を罵るのと同じくらい難しい。だって彼等は演じている訳じゃない。信じているのだからね。
 さて今晩、僕達は何処へ行こう?
 任せるよ。何処も同じだ。何処だろうと君の行きたい処へ。君は乱暴なほどのリズムで、僕の奥底を激しく揺さぶるよ。僕はその音楽みたいなリズムに乗るよ。有能なコンタクティは金星人とも会話が出来るらしいから、僕は君の長くて実の無い愚痴と自慢を苦も無く聴く事に専念するよ。メリル、愛想笑いは悲しいな。笑えるなら笑った方が良い。誰も損しないぜ。

「ね、今日は何処行きたい?」
「そうだな、君と一緒なら何処だって良いよ」

 恐らく僕は、この後「最近雑誌で見付けた、静かで料理の美味しそうな店」に連れて行かれるだろう。何にも文句は無いよ。只、僕は演じているだけなんだ。君は演じているのも気付かないだろう。だってお互い、それを信じているのだからね。白い、静か、健やか、穏やか、優しく透明な空気のような、しかし実体の知れない、僕はマイナスイオンみたいな男さ。見た事ないだろ、僕の事。しかし存在しているよ。君は僕を吸い込んで、せいぜい美しくなると良い。
[ 2010/03/28 18:26 ] 小説 | TB(-) | CM(-)

春とエメラルド(she stomps spring sprinters.)

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 春は速度を変えずに、僕等の町に訪れる。雪解けは嫌いだ。始まりよりも終わりを強く意識させるから。陸上部は放課後、校庭に集合――皆本カスミが言ったので、僕は此処に居る。放課後。校庭。水と泥。空と土。風が冷たい。全く僕の走行を邪魔するような、雪解けの雪。

「あれ、アンタしか来てないの?」

 錆びた白線引きを転がしながら、緑色のジャージ姿のカスミが現れた。新三年生のジャージほど、趣味の悪い色は無い。旧三年生――要するに先月の卒業生のジャージは小豆色で、それも充分悪趣味だったが、新三年生のジャージの艶やかな緑色(それはエメラルド・グリーンと表現したほうが良い)の趣味の悪さには敵わない。人混みに紛れても見失う事は無いだろう目の前のエメラルド・グリーンは、再び僕に話しかけた。

「仕方ないか、アンタしか居ないようなもんだし」

 グラウンドに白線を引く場合、最近では炭酸カルシウムを使う。一昔前までは石灰を使って居たらしいのだが、人体に害があるので使われなくなったそうだ。だとしたら石灰で白線を引いて居た世代は、侵された世代だな。何らかの害に侵されたのであれば、何らかの言い訳が成立する。僕の100mの走行タイムは、二年の秋にピタリと止まった。記録が伸びないのは炭酸カルシウムの責任では無い。人体に害は無いのだから。

「こんな状態じゃ、まだ走るの無理かなぁ」

 カスミは濡れた土の上に白線を引こうとして車輪を転がし、すぐに止めた。陸上部は僕を入れて六人。新三年生は僕一人で、残りは新二年生、新入生は何人が入部してくるのか、まだ解らない。普通の高校であれば、陸上部というのはもう少し活気がありそうなもんだが、我が校の体育会系部活動の盛り上がらなさは陸上部だけでは飽き足らず、野球部やサッカー部にまで及ぶ。我が校で最も盛り上がって居るのは「メディア研究部」で、その実態はアニメとラノベと声優好きの集まりだ。部員数は100人に上り、繰り返すがそれに対して我が陸上部は、僕を入れて六人しか居ない。

「走るのは、まだ無理じゃないか」

 走るのは無理。ならば何故、僕は此処に居る? 雪解けの校庭は白線を引く事さえままならず、六人の陸上部員は僕以外、まるで熱心では無いのに。卒業生――旧三年生は練習熱心だった。数年前までは部員数も多く、県大会で結果を残すような選手も少なくなかったらしい。そんな古き良き時代の影響を最後に受けたのが旧三年生だったのだが、彼等は結果を残せなかった。彼等の後に続く世代は育たなかった。
 全く意味が無い。新三年生――要するに僕達の世代は、僕とカスミだけが残った。カスミは最初1500mの選手だったが、二年の春にマネージャーへ転向した。僕達の世代は一年生の春には三十人近く在籍して居たが、二年生になる頃には十人に減少して居た。半年をかけて一人ずつ退部していき、二年の冬に八人目が辞めると、僕とカスミの二人だけになった。

「意味なんて無いな」

 100mの記録が伸びなくなって久しい。走っても走っても結果は出ない。別に走る事を辞めたって構わない。こんな学校の、こんな部活動で、誰にも期待されず、このまま結果を出せなくたって誰も困りはしない。記録が伸びたところで、どうせ全国レベルではない。退屈で死にたくなるよ。僕が100mを10秒で走ったところで、世界の何が変わる? 

「本気じゃないんだよ」
「え?」
「本気じゃないんだよ」

 何も変わりはしない。しかし走る。走るのが好きだから、なんて綺麗事にしかならない。100mの記録は伸びず、成長を止めた僕は第二次性徴の余韻に浸って居る。走るのは嫌いだ。疲れるだけだから。只、諦め切れない。こんなもんじゃない。
 すべからく他人に。伝えたい事を伝える術は、そう多くは無い。例えば、それは言葉だ。僕の本気はこんなもんじゃないと、頭の中で、魂の先で、馬鹿みたいに叫んでる。伝わるはずも無い。誰にも。声に出したところで、僕は自信過剰の変人だよ。意味なんて無いな。僕の言葉に意味なんて無い。僕の言葉に意味なんて無くても、僕が言葉にした瞬間、僕の言葉は世界に存在した。それは事実だ。同じように僕の無意味さにも、僕の無価値さにも、僕の無責任さにも、僕が生まれてきたのと同じだけの、重さは有る。そう信じたいんだ。

「本気じゃない?」

 目の前にカスミの姿は無かった。車輪を転がす音が聞こえて、白線を引くカスミの小さな背中が見えた。数秒間、僕はそれを眺めた。カスミは白線を引く手を休めると、エメラルド・グリーンのジャージの袖で汗を拭いた。吐く息が白い、まだ寒い校庭で、汗をかいた。屈伸。身体を温める為の準備運動。汗。白い息を吐きながら、僕は親指と人差し指で(絵描きが風景や静物を測るように)カスミの背中を測った。艶やかなエメラルド・グリーン。笑えるほど小さい背中だった。

「本気出せば、今すぐ届きそうだけどな」

 僕は指先で世界の小ささを測る。綺麗事さえ言えずに糞便ばかり垂れ流して、また世界の汚さを憂いてる。そういう真似だけは上手くなる。深呼吸したらどうだ。呑気に呼吸が出来るなんて奇跡だぜ。退屈に死にたくなるなんて、呆れるほど贅沢だぜ。世界は笑えるほど大きい。少なくとも僕の指先よりはな。

「本気出せば良いんだろ?」

 錆びた車輪を引き摺るようにして此方に歩いてくるカスミに、普段より少しだけ強い語調で、僕は言った。カスミは頬を薄く桜色に上気させ、汗で垂れ下がった前髪を人差し指で軽く横に流しながら、見上げるように僕を見た。呼吸。空中に溶けるような白。

「何の話ィ?」

 まるで呑気に言いながらカスミは立ち止まると、エメラルド・グリーンのジャージのポケットから黄色と黒のストップウォッチを取り出し、親指で何度か操作した。風に紛れて短い機械音。ピッピッピ。放課後。校庭。雪解けの青空。土の色。近付く春の匂い。まだ冷たい風。最高気温。最低気温。今、僕とカスミは、馬鹿みたく二人きりだった。

「さ、走ってみる?」

 ストップウォッチの画面を向けて、カスミは言った。

「別に」

 何に対しての反応か解らない言葉で、僕は返した。一日。一分。一秒。自覚する重さ。目の前に100㎏の小さな鉄と、100㎏の大きな埃があるとして、同じ意味だと思えるかい? 僕はすぐに鉄を拾おうとする。空気のような埃を集めようとはしない。また一日が、一分が、一秒が過ぎて往く。何も手には残らない。空中に手を伸ばせよ。埃なら飛んでるぜ。走りながら、走りながら、出来るだけ沢山の埃を掴まえるんだ。飲み込むんだ。溜め込むんだ。一歩、一歩、更に一歩、誰よりも速く。何の為に? 春は速度を変えずに、僕等の町に訪れる。

「私ね、アンタのタイム測るの、ちょっと好きだよ」

 もしも僕の中に希望を見付けたなら、君は小さく笑っておくれ。世界の大半は君と僕と、あとはエメラルド・グリーンの風と、他人で構成されて居る。もしも君の中に希望を見付けたなら、僕はまだ生きられる。一日後を、一分後を、一秒後を。其の証拠に、僕は小さく笑うよ。

「今、何て言った?」

僕の声にカスミは無反応で、代わりに新しい白線を引く車輪の音が響いた。
[ 2010/03/27 18:40 ] 小説 | TB(-) | CM(-)

馴染まない。

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コンビニで宇宙人の本買って、最近は寝る前にそれ読んでる。

――というような一言を、普通はtwitterに書くんだろうけど、
初めて8ヶ月経った今も、まだTwitterに馴染めない。全然馴染めない。マジで馴染めない。
100%完全に、ピッタリと、揺ぎなく馴染めない。馴染める要素が見当たらない。

寸分の狂いもなく馴染んでいかない。馴染める気がしない。
小学4年の春に新しいクラスに馴染めなかった石田君を思い出すほど馴染まない。
二日に一回は自分が馴染んでない夢を見て目が覚める。目が覚めたところでやっぱり馴染んでない。

こんなに馴染んでないんだから、Twitterとは馴染まなさを楽しむものなのではないだろうか。
自分がどれほど馴染んでないかをフォロー数で伝えるのがTwitterの楽しみ方なのではないだろうか。
もしくは皆、僕に隠れて美味しいものを食べてるんじゃないだろうか。Twitterってそういう場所なんじゃないだろうか。
むしろTwitterというのは、お菓子の名前なんじゃないだろうか。ルマンドとかアルフォートと同じ意味なんじゃないだろうか。

Twitter、はじめました。(8ヶ月前に)
[ 2010/03/22 09:32 ] 雑記 | TB(-) | CM(-)

さよなら、電脳戦艦。

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前回、約一年ぶりに復活して、今回、まさかの最終回だと……ッ!

という訳で、
私オレンジが企画するオンライン・ラジヲ【電脳戦艦エレクチヲン】が、
今回の放送をもって終了する運びとなりました。

やり残した事がない訳では無いけれど、今やれる事はやった気もします。
放送を聴いてもらえば解りますが、楽しく終わっております。
実際、オンライン・ラジヲ楽しかったなぁ。

誰しも中学生くらいの頃は、
一度はラジオに耳を傾けるんじゃないかなと思うのですが、
僕も多くの同級生と同じように、深夜ラジオを聴いて育った一人で、
やっぱり「自分でラジオやってみたい」という気持ちは、ずっと持っておりました。

そういう気持ちは、よく日記で冗談半分で書いてたんですけど、
そんな都合よく「ラジオやってみない?」と声をかけてくれる人などおらず、
それならば0から自分で好き勝手に企画しようと、ちゅい太を誘って始めたのが、
この【電脳戦艦エレクチヲン】でした。

さて、どういう形での放送にしようかと考えた時に、
僕は、いわゆる素人らしいネットラジオじゃなくて「番組」を作りたかった。
だけれど僕達は喋りのプロでは無いから、会話だけで楽しんでもらうには限界がある。
そこで画像を多用した「目と耳で楽しめるラジヲ番組」を作ろうと思った。
youtubeの「動画」として公開し、誰でも気軽に聴けるようにした。

こうして始まったエレクチヲンを、僕は一貫して「オンライン・ラジヲ」と呼んだ。
基本的に「ネットラジオ」という呼び方はしなかった。
それから「ラジオ」という表記もしなかった。

あくまでも「ラジヲ」。
それをネットを介して「オンラインで流している」という状態。

これは、本当の「ラジオ」番組を制作している方達に、
僕なりの敬意を表しての事だった。
自分の手作り番組を「ラジオです」と言う気にはなれなかった。

やっぱり僕は本当の「ラジオ」というものに憧れている。
声一本で、誰かを笑わし、誰かを励まし、誰かを和ませたりしている。
そういう「ラジオ」という存在に、僕はこれからも、ずっと憧れ続けるだろう。

最近「ネットでラジオ放送が聴けるようになる」というようなニュースが話題になった。
素晴らしい。ラジオというメディアの火は、消えるべきではないのだ。
素人でも手軽に「ネットラジオ」を流せる時代だけれど、ラジオはラジオであるべきだ。

さて、僕が初めて作った【電脳戦艦エレクチヲン】。
自分で企画し、自分で構成し、自分で編集する。
別に仕事でもなんでもないから、他人が見れば、それは趣味だ。
しかしそれは楽しく、一方で大変だったが、良い物が完成した時の満足感は、
何物にも変え難いモノだった。

こんな僕のワガママに付き合ってくれた、忠犬ちゅい太君に感謝したい。
大阪出身の彼は、今から5年ほど前に「住みたいから」という理由で、
スーツケース一個を持って、何となく札幌に住む事になったが、
僕はずっと、札幌で何かを成し遂げて欲しいと思ってきた。

モノを作るのは大変だという事。
他人から満足な反応が得られなかった時の虚しさ。
それがどれだけ自分が頑張って作ったモノでも、評価するのは他人だという事。
しかし、他人が喜んでくれた時、それは自分の喜びにもなるという事。
そうやって他人の人生と関わっていくのだという事。

これから先、彼がどんな人生を歩むのかは解らないが、
このオンライン・ラジヲでの経験が、彼の心の片隅にでも残れば良いと思う。
もし誰かの作品を、自分が見る時や聴く時に、ほんの少しでも受け取り方が変わると良い。

さて、最終回です。
数少ない(数少ない言うな)リスナーの皆様。
最後までお付き合いくださって、どうもありがとうございました。
一回も聴いた事がなかったという人は、今日この機会に聴いてくれると嬉しいな。

mixiコミュ管理人のやしお君、どうもありがとう。
今もコミュに参加してくれている方達、物好きですね、ありがとう。
M線上のアリア、特に音楽製作の蓮火さん、曲CM使わせてもらってました、ありがとう。

最後です。
とは言え、僕のことだから、
またすぐに新しいことを始めるような気もします。
何時もどおりに小説を書きながら、気まぐれで絵を描きながら、
また好き勝手に、自分の作りたい世界を、声でも表現するかもしれません。
その時は、またよろしゅう。

それでは今から、最後の放送です。
最終回は前後編・二部構成の、二十分放送です。
どうぞ、ごゆっくりお楽しみあれ。

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【電脳戦艦エレクチヲン 第12回】
 最終回!ちゅい太が一杯しゃべるよ卒業式SP!
 放送開始日:2010.3.18

 出演:蜜蜂リリィ&忠犬ちゅい太
 編集:蜜蜂リリィ

■前編

★URL=http://www.youtube.com/watch?v=e9xut_GSsfE

■後編

★URL=http://www.youtube.com/watch?v=8mOhK1nh0Zg
[ 2010/03/20 16:40 ] 雑記 | TB(-) | CM(-)
目次
★説明




★短編






★長編小説














★短編






★お笑い








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