VOSTOK8 blog - Astronaut' Monologue TOP  >  2010年05月

単純

人間、シンプルが一番である。

複雑なモノを複雑に扱えば、
更に複雑になるだけである。
しかし大抵の真実は、決まって常にシンプル単純なのだ。

人生は複雑に絡まり合う道のようだが、
複雑にしているのは自分自身でもある。
出来るだけシンプルにいきたいものだ。

薬を飲むと眠くなり、珈琲を飲むと眠れなくなり、
オロナミンCを飲むと元気になる人間で在りたい。
[ 2010/05/30 22:57 ] 雑記 | TB(-) | CM(-)

少年ラジオ

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中学一年生の頃、親にラジカセを買ってもらった。
一台でラジオ・カセットテープ・CDまで聴けるステキな代物で、
それが部屋にあるだけで、少し大人になったような気がした。

とはいえCDを買う金なんて無かったから、
姉のCDを借りたり、友達同士で貸し借りしたり、古いカセットテープを聴いたりした。
それから、ラジオをよく聴いた。

AMラジオの深夜帯には、今も昔も『オールナイトニッポン』という番組があるが、
中学生の僕にとっては少々深夜すぎて、あまり聴く事が出来なかった。
なので毎日24:00から始まる『アタックヤング』が、僕にとっての深夜ラジオだった。

アタックヤング――通称アタヤンは、北海道のローカルラジオ番組だが、
全国区になる前の松山千春・KAN・田中義剛・山崎まさよしなどを輩出した番組でもあった。
特に僕が聴いていた時期は、日本中が『愛は勝つ』で盛り上がっていた頃のKANが、
金曜日のパーソナリティとして毎週出演していた。

僕は「あのKANが北海道のラジオに出るなんて、アタヤンすげぇ!」と一人興奮した。
そんな金曜日のパーソナリティがKANさんで、
その一日前、木曜日のパーソナリティがMARUさんだった。

当時の僕にとって、MARUさんは青少年の悩み相談にのってくれる、
誠実で真っ直ぐな、爽やかな声のお兄さんという印象だった。
MARUさんの日のエンディングテーマは、中島みゆきの「with」だった。

僕は毎日、ラジオを聴いた。
そのうち高校生になり、アルバイトを始め、あまり聴かなくなり、
やがてインターネットを始めるようになってからは、いよいよ聴かなくなった。
それでも、たまに思い出したように周波数を合わせ、好きだった番組を聴いたりした。

大人になっても、僕はラジオが好きだった。
昔に比べると全然聴かなくなったけれど、やはり好きだった。
僕よりもラジオが好きな人や、ラジオに詳しい人は、沢山いるだろう。
だけど、僕はラジオが好きだった。

僕は多分、子供の頃に感じたラジオの空気が好きで、
その頃に感じた何ともいえぬ空気に、ずっと憧れているのだと思う。

中学一年生の僕にとって、寝る前に聴くラジオは最大の娯楽だった。
娯楽というか、中学生当時の僕は、夜一人で寝るのが怖かったので、
耳元で話してくれるラジオは、味方でもあった。

当たり前に流れている風のような、当たり前の空気。安心。
僕は今でも車に乗ると、ほとんどの場合、音楽ではなくラジオを聴く。
そこには当たり前のように喋る人達がいて、当たり前のように聴いている僕がいる。
耳を傾けたり、聞き逃したり、どうでも良い話だったり、たまに感動する話だったり――。

※ ※ ※

5月22日。
FM新さっぽろ 77.6MHz
PM17:00~【MARUの時間】にゲスト出演させて頂きました。

自分が中学時代に聴いていた「あのMARUさん」とラジオでお話するというのは、
夢のようで実感が沸かず、緊張の内に終わってしまい全然まともに話せませんでしたが、
本当に温かく接して頂き、個人的にも非常に良い勉強になりました。

番組内では「インターネット小説のカリスマ」などと、とんでもなく持ち上げて頂き、
「ボクラが残したコトバ」など過去の作品や、個人サイトを紹介させてくださったり、
しかも僕の出番が終わった後も、何度も何度も名前を連呼してくださっていたそうで……。

自分の小説の話は、あまり上手く話せたとは思えないのですが、
自分がどれだけラジオが好きかは、割と上手く話せたような気がします。
本当に本当に有難く、感謝の念に堪えません。大変お邪魔しました。
番組関係者の方々に深く感謝します。

今回、番組の最後にMARUさんが流したエンディングテーマは、
中島みゆきの「maybe」だったと聞きました。
あの当時、アタヤンのエンディングテーマが中島みゆきだったように――。

※ ※ ※

中学一年生の頃、親にラジカセを買ってもらった。
僕はそれでラジオを聴いて、真っ白なノートに鉛筆でマンガを描いた。
沢山の空想を膨らませ、それを鉛筆で書き殴っては消した。
ラジオからは何時もの声が流れ、僕は夢を見てた。

そして、今も見てる。





FM新さっぽろ
[ 2010/05/26 11:36 ] 雑記 | TB(-) | CM(-)

アイン(your step means my setup.)

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「compression internal organs が値上がりするんだって」

「へぇ」と呟いたまま、サワコの言葉を遮るように、僕は歩き始めた。太陽は地面から垂直に伸びて、真上から直射的な熱風を、僕等に吹き込んでいる。噂話は嫌いだ。誰も得しないから。真実は大体の場合、真実以外にはならない。なってはいけない。
 ところが噂話は真実をいとも簡単に嘘に変えて、悪ぶる事も無く他人のフリをしている。誰にも責任が降りかからないのは丁度、真夏の砂浜で抱き合う恋人同士みたいなもんだ。
「責任は降りかからない。迷惑はかかる」
「それ何の話?」
「別に」
 グランシオ・スワップから南南西に伸びる国道を時速120㎞で進んでいたら、やがて海が見えるだろう。そういう話だ。
 要するに、「実体の無い実体が、真実に成り代わっているって話さ」
「よく解んないな」
 サワコは波音に耳を傾けて、もう僕の声なんて聞いちゃいなかった。僕だって同じだ。よく解んない事柄に、何とか意味を与えながら、わざわざ此処までやって来たんだろ。今更、失った荷物と、手に入れた荷物を、両天秤に架ける行為に、大層な意味なんてあるか?
「無いね。何も無い」
「何の話?」
「この言葉に意味なんて無いって話」

 言葉は虚構だよ、サワコ。
 ならば僕等の生死も同じ事。実体の無い実体が、真実に成り代わっている。エナメル質に濡れた海と、無色透明の空気。指に触れて感じるサワコの肌。何処にも差異なんて無いのさ。それなのに僕にとって、サワコが唯一絶対的に、サワコで在り続ける理由は何だと思う? 認識しているという事。欲求しているという事。それを疑ってしまうと、全てが成立しなくなるという事。
「笑うって行為に、よく似ているな」
「はははっ」
 恐らく意味も解っていないのに、サワコは短く笑った。眼前に広がる、静かな海を眺めたまま笑った。意味なんて無い事柄が欲しいよ、サワコ。認識できない欲求。僕は、それが欲しい。何をするにも情報が多すぎるんだ。情報に伴う理由が必要になる。理由は噂話に変わり、真実は嘘に変わる。誰も得なんかしないよ。宛を失くした迷惑だけが残るだろう。誰に? ――僕等の知らない誰かに。

「僕等の知らない誰か、ね」

 知らないという事は、存在しない事と同じか? 同じでは無い。見えないという事が、存在しない事と同じでは無いように。太陽が放射したガンマに、誰も気付かないように。サワコの悲しみに、僕が気付かないように。黒点が発生し、質量が増加し、紅炎が噴出したって気付かない。惑星が飲み込まれる最期の瞬間に、僕とサワコは悟るだろう。

「compression internal organs が値上がりするんだって」

「へぇ」、と呟いたまま、先程と同じ会話を繰り返した事に、僕は気が付いた。生命を維持する身体機能を、たった一つの臓器に圧縮し、半永久的に生きる事を、最初に望んだのは誰だ? だけど、それは噂話だよ、サワコ。誰が最初に望んだとしても、宛を失くした迷惑が残るだけだ。ところが誰もが半永久的に生きるなら、誰もが半永久的に死なないという事。宛が在るという事。だとしたら、それは。

「……それは、誰の為の命なのかしら」

 グランシオ・スワップの空は青く、土は赤かった。サワコが太陽を見上げて、一歩踏み出した。崖の上の小さな石が弾かれて、海に落ちた。 何にも意味の無い事で笑いたいんだよ、サワコ。喩えば明日、死んでしまう我が身だったとしても。僕等の全てが、もう手遅れだったとしても。

「月が昇るまで生きていよう。それを見たら、次は太陽が昇るまで」

 瞬間、宙ぶらりんの片足を止めたまま、サワコは笑った。
 何となく、僕も笑った。
[ 2010/05/18 09:05 ] 小説 | TB(-) | CM(-)

403

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 一日は過ぎ往きて、もう何も無い。
 言葉は武器に成り得るが、言葉を得るのは何時も困難だ。隣人の嘘を嘘と見抜けぬまま、音は403号室に住み続けて居る。美しい歌は美しいままだが、其れを聴く者達は必ず老い往くだろう。音は屋上に昇った。泣きたいような月だ。眠るような朝だ。
 若い世代(音も社会的に見れば充分に若いが)は新しい文化を生み出す。彼等は、其れが新しい規則を生んだ事と同義だとは考えない。規則は彼等が忌むモノの一つだから。テレビで観たモノは既に古い。一秒は一秒の後で既に過去となるが、迫り来る次の一秒に対応し切れないから止めてしまいたくなる。
 音が自分の生を実感するのは決まって、自分の中に埋め込まれた死(其れも間接的な死)―― compression internal organs を感じる瞬間だった。其れは音の腹で、子宮の上で疼いて蠢く「生きる為の死」そのものだったから、受け入れる度に吐き、また吐く度に思い出した。地球上には compression internal organs が無ければ生きられない人間が何万人も存在するが、誰もが平等に手に入れられる代物という訳ではない。実在すら疑わしい噂話のようになって居る。
「都市伝説みたいなもん?」
「何が?」と音は返す。あの日、最初に声を発したのはキリンだった。今本キリンは404号室の住人で同級生で幼馴染だったが、マンションの屋上仲間でもあった。彼の手足は長く、煙草を嗜む指によく似合った。煙を吐き出して言う。
「煙草を吸い過ぎると病気になるって話」
「事実」
音は借りてきたばかりの文庫本を高校指定のカバンに放り込むと、代わりにまだ膨らませる前の水風船を取り出した。透明な水を溜め込む為の――「臓器がね、」汚れたり、腫れたり、膨らんだりするのは事実で、都市伝説でも何でもない。永遠では無いのだ。だから欲しがる。考える。生み出す。新しい文化。規則。規制。法律。錆びた蛇口をひねり、水風船を膨らませて空中に放った。


(はっは! 今の見た?)


 結局、キリンは最期まで、音を眺めて居た。不平等な命は等価交換する事が出来ない。音は生き残った。死を抱えながら生き残るしか術が無かった。 compression internal organs はこの国で生まれた技術だが、この国で許された文化では無い。生を抱えるのは、死を抱えるのと同義だ。だから許されない。放り投げてしまいたくなる。無責任な(一秒毎に接近する)命ごと。また次の一秒が迫り来て、音は目を瞑った。403号室に、まだ朝は来ない。
[ 2010/05/17 08:54 ] 小説 | TB(-) | CM(-)
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