VOSTOK8 blog - Astronaut' Monologue TOP  >  2011年05月

MAGIC

昨日は月曜日。
僕のラジオは、初めてゲストをお招きした。

ラジオ番組を始めて、早半年。
僕の番組の場合、トークや選曲はもちろん、
ミキシング(放送機材の操作)も僕が自分で行うので、
常に時計を見たり、時間に合わせて曲やCMを入れたりと、考える事が沢山ある。
この半年間で何度、放送事故未遂を起こしかけたのか解らない。

そんな沢山の試行錯誤と失敗を繰り返しながら、
少しずつ「話す」「操る」「届ける」という技術を身に付け、
『言葉』というものを、新たな角度から考え直す機会を頂いている。

半年間、ずっと自分のことで精一杯だったのだが、
この辺で一度、ゲストを招いて話してみたいと思った。
これは僕の中で、ちょっとすごい出来事だった。

先日、面白い人物と知り合ったので、
その方をお招きして、話してみたら面白いんじゃないかな、と考えた。

ストリート・マジシャンの堂本秋次さん。
彼はまだ二十代前半と若いが、落ち着いていて、何処となく不思議な佇まいをしている。
すぐそこに居るのに、すぐそこには居ないような、マジシャンらしい空気をまとっている。
実は、この「らしい」というのが重要なのだ。

料理人であれば「この人の作る料理は美味そうだな」という空気。
マジシャンであれば「この人は面白いマジックを見せてくれそうだな」という空気。
立ち振る舞いや全身から漂っている、何ともいえぬ説得力。
それが「らしさ」なのである。

そんな堂本秋次さんを、番組のゲストにお招きした。
昨日の番組のテーマが「驚き-サプライズ-」だったので、
彼をお招きしていることは、直前まで誰にも教えなかった。

一応、番組アシスタントのちゅいた君に、番組開始15分前くらいに、
今日は18時20分頃からゲストが入るよ、とだけ告げると、彼は驚いていた。
驚いていたというより、軽くテンパっていた。

本当は「驚き-サプライズ-」がテーマなので、
ゲストを招いていることさえ伏せておきたかったのだけれど、
「いきなり知らない人がスタジオに乗り込んできた」となると、
番組自体が色んな意味でテンパってしまうので、一応それだけ教えておいた。

18時20分を少し過ぎた頃、その時間は来た。
僕達は三本のマイクを囲み、それから20分ほど話をした。
堂本秋次さんは、札幌で活動するストリート・マジシャンである。
まだ若い。しかしプロ意識が高い。僕はそう感じた。

「他人に見せる」という意識が、高いのだ。
その立ち振る舞い、言葉選び、所作、動作、その隅々までに、
理由を持たせようとしている意識の高さを、僕は感じずには居られなかった。

僕自身、言葉を書く時、そうであるように振舞う。
書かれた言葉、書かれなかった言葉、書かれて削られた言葉、全てに重さがある。
伝えたい言葉によって、文体を変え、思考を変え、読み手への立ち振る舞いさえ変える。
読み手との距離感を――要するに自分の領域を――演じる「世界」を、確保する。

距離感そのものが「嘘」だ。
しかし、それが真実であるし、本質でもある。
要するに、自分が演じる役割に対して、僕達は真摯でなければならない。

堂本秋次というマジシャンの演技を見て、
僕は最近、自分の中で忘れかけていた、そうした意識に気付いた。
それに気付いたのがラジオの現場というのも、面白い。

言葉は、嘘や演技の為にあるが、
僕達は、嘘や演技からは、結局のところ逃れられない。
それで最後は、真実を選ぶのだ。

「夢や目標はあるのか」と訊くと、
「世界中にマジックを見せて回ること」と言った。

それがまるで嘘には聞こえなかった。

プロ意識。
マジシャンにはマジシャンの。詩人には詩人の。
例えば、お金が発生するからプロ意識が芽生える訳ではない。
お金が発生するというのは、純粋に契約としての「プロ」だ。
プロ意識というは、多分そういうものとは少し違う。

番組の途中で10分ほど、彼にマジックを披露してもらった。
ラジオでは言葉しか届けられないから、ネット環境のある人には、
ライブ映像を観てもらいたいなと思ったけれど、僕には言葉しか無かった。

それで少しでも目の前で起きている不思議なマジックを、
僕なりに言葉にして伝えようと試みたところ、アシスタントのちゅいた君が、
目の前で「うお~!」「すげ~!」「マジで!」「怖ぇ~!」「いやぁ~!」などと、
以後延々と10分間、生放送のラジオで、感嘆符だらけの、まったく情景が伝わらない、
それでいてリアルな、色んな意味で人間らしいっちゃ人間らしい反応を漏らし続けていた。

――「お前のプロ意識わい!」と、僕は思った。


[ 2011/05/24 16:08 ] 雑記 | TB(-) | CM(-)

誕生日

あまり上手く話せた訳ではないのだけれど。

昨日はラジオの日だった。
毎週、何を話すかテーマを決めているのだけれど、
昨日のテーマは「誕生日」だった。

僕の周りでは最近、誕生日が続いている。
僕自身の誕生日も含めて、最近は「おめでとう」の言い合いである。
まぁ、昔に比べると「よっしゃ俺誕生日だぜ祝え!」みたいなテンションは無い。
穏やかに、和やかに、静かに過ごしたいものである。

それでも、まぁ、誰かに「おめでとう」と言ってもらえると嬉しいし、
それは今、自分が此処にいて、少なからず認められている証のような気もするのだ。
なのでラジオのテーマを「誕生日」にして、色んな角度から誕生日の話をしてみた。

まぁ、こんな感じで書いてはいるけれど、別に真面目な話をした訳ではない。
「今年の誕生日はこんな感じだった」とか「思い出に残る誕生日は」とか、
「新たな始まりが第二の誕生日になることってあるよね」みたいな話を、ツラツラと話した。
先週テレビに出たので、その話もした。とにかく60分、話すテーマは何らかの「誕生日」。

番組の最後にちょっとした「まとめ」っぽいことを話すのだけれど、
そこだけは毎回、ちょっと真面目に話す。毎回、最後は締めようと。
なので事前に、そこで何を話そうか考えていた。

最近、ここ数日、ちょっと考えていたことがあった。
だけれど、この気持ちを言葉にするのは難しいな、と思った。
昔だったら簡単に言えたことが、歳をとる毎に上手く言えなくなってくる。
僕は最近、よくそんなことを考える。

それで、あまり上手く話せた訳ではないのだけれど。
上手く伝えるのは難しい内容だと思ったけれど、それを話してみた。
ラジオの中だけじゃなく、もう少し伝えられたら良いと思って、ここでも話してみる。
こんなことを話した。

――本日のテーマは「誕生日」。

当たり前だけれど、誕生日って一年に一回しか来ない。
ということは自分が生きてきた歳の数しか、自分の誕生日は経験できない。
当たり前だけれど。

日本人の平均寿命が80歳として、人生80年なら、80回。
これを多いと思うか、少ないと思うか。

僕は、少ないと思う。
食事をしたり、映画をみたり、試験を受けたり、トイレに行ったり、
他愛のないことで笑ったり、怒ったり、毎日続けていく訳だけれど、
その沢山の毎日の中に、たった80回。

すごく貴重な、宝石みたいなもんだと思う。

生きている間は、自分が生まれた日をお祝いする。
それから、大切な誰かが生まれた日をお祝いする。

どちらも一年に一回。

そして、そのどちらも、
自分や、大切な人が、生きている間しか、お祝いすることは出来ない。

もしも死んでしまったら、
その日を覚えるようになる。
その日を忘れないようにする。

例えば自分のお祖父さんやお祖母さんの命日は覚えていても、
誕生日は知らなかったり、忘れてしまっている。
歴史上の偉人の墓参りに行くことはあっても、誕生日は祝わない。
ジョン・レノンが死んだ日は言えても、生まれた日は覚えてない。

だから生まれた日は、誕生日は、
自分が生きている間の、宝物みたいだなぁと思う。

人生は、人それぞれ。

嫌な出来事も、腹が立つことも、自分にとって耐え難い出来事も、
もう消えて無くなりたくなるような出来事だって、人それぞれにあるし、
それが他人から見て些細な出来事だって、本人が真剣なら馬鹿にできることじゃない。

だけど、僕は覚えていたいんだ。
どんな人でも、必ず一個、宝物を持っている。
生きている間しか持っていられない、大切な宝物を持っている。

それが誕生日だ。

命だよ。

僕は、意地でも手放さないでいたいなぁと思います。
もったいないからね。
そして皆さんも、そうであると良いなぁと思います。

本日5/17。
もし、この放送を聴いている方の中に、
誕生日の方がいたら、おめでとう。

生まれてくれて、ありがとう。
[ 2011/05/17 09:56 ] 雑記 | TB(-) | CM(-)

半透明の、白だ。

月が大きな夜は、嫌いだった。
アルファベットの文字列を眺めても、其処に理由など見出せないのに、
残念なことに意味は成立していて、此のように問いかけた。
――"吸い込め。そして吐き出せ"。

其れで月が大きな夜に、彼女の肌を這ったのは、半透明の白だった。
最初、窓から見える月を眺めて気を紛らわせたが、途中からは苦痛に変わった。
音も無く揺れる世界で、大きな月だけが見えたので手を伸ばしたが、届きはしなかった。

理由など無いが、残念なことに意味は成立していたので、
彼女は其れを頭の中で、何度か繰り返した。
そして声に出した。

「吸い込め。そして吐き出、」

せ――。
揺れ動くブランコから、飛び降りるようなリズムで。
飛び降りた先に地面は無い。真っ逆さまに、墜ちる。其のようなリズムで。

此の夜、恐らく驚くほど彼女は一人だった。
読みかけの本を開いても、耳元で音楽を聴いても、一人だった。
小学二年の頃だったか、世界で一番綺麗な色は白だと信じていたから、
白の絵の具が沢山欲しくて、近所の文房具屋に行き、こっそりポケットに入れた。
そんなことを思い出した。

其の日から、

「汚れてしまったんだ」

誰が?

朝が来る前に、夜は必ず息を潜めるから、全て吸い込んでしまいたい。
吐き出して、何も変わらず、時計の音さえも聴こえない。
自分の心音を感じて、思わず耳を塞いだ。

少しだけ開けた窓から、線路の上を疾走る、列車の音が聞こえた。
貨物列車だろうか。出来れば、寝台列車だと良い。
誰かが真っ白なシーツで眠る、寝台列車だと良いと、彼女は思った。

自分は、何処へ行くのだろう。
手を伸ばしても、やはり何処にも届きはしなかった。
其れで大きな月が邪魔だった。白く、円く、厭味なほどに正しかった。

無音。

ティッシュを、一枚。

雑音。

半透明の白が、彼女の肌を這ったので、彼女は其れを拭き取った。
其処に理由など見出せないのに、残念なことに意味は成立していて、
ほとんど同じ瞬間に、目的と呼ぶことも出来た。

其れは最後に、彼女に此のように問いかけた。

――"吸い込め。そして吐き出せ。また吸い込む為に"。

馬鹿げている。
と思ったが、窓の外から小鳥の声が聞こえた。
同じように世界は、呆気ないほど青く、そして白く、澄み始めていた。

溜息を吐き、吸い込んで、少し笑い。
カーテンを勢いよく開け、其れで彼女は、ようやく眠った。
[ 2011/05/11 18:08 ] 小説 | TB(-) | CM(-)

ベテルギウスは音も無く泣いた

ベテルギウスは音も無く泣いた

ヨカラヌモノ達は 舌をなめている


やつらは 悪人の顔をせず 善人の顔をせず

暴力を振るわず 嘘を吐かず 他人を騙さず



普通の人の顔をして 普通の人を食い尽くす


止まり木の上で 小鳥は鳴いた

その理由を 僕は知らない

綺麗な色の自転車に乗って あの子が走り抜けた

何時だか名前を聞いたはずだが 忘れてしまった

思い出そうと 断片を 宙に放り投げてみる


ベテルギウスは音も無く泣いた

ヨカラヌモノ達は 舌をなめている
[ 2011/05/10 17:47 ] 詩歌 | TB(-) | CM(-)
目次
★説明




★短編






★長編小説














★短編






★お笑い








Blog Search
QR CORD
QR