VOSTOK8 blog - Astronaut' Monologue TOP  >  2012年01月

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ハロー・マイフレンド・バイバイ・アリア

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今から一ヶ月前に、ひとつの作品を完結させた。
2007-2008年に書いていた『M線上のアリア』という作品だ。

この作品が生まれた経緯を説明しようとすると、ちょっと複雑になる。
かと言って簡単に説明しようとすると「作者が13人います」などと、
説明された人もイマイチ意味が解らない、という結果になる。

それで、この作品は、
書き手にとっては非常に思い入れが深いにも関わらず、
読み手にとっては理解しがたい作品という、
悲しいポジションに甘んじてきた。

その作品を、完結させた。

子供の頃から絵描きを目指していた僕が、何の因果か、
インターネットで文章染みた何かを書き始めるようになって、
気が付けば早十年以上が経つ。

その間に、他人様に読んでもらえる機会も増えたし、
自分なりに思い入れの深い作品にも幾つか出会えたが、
この『M線上のアリア』ほど葛藤しながら書いた作品は無かった。

何故なら、これは先程も言った通り「作者が13人いる」異例の小説でありながら、
事前に打ち合わせを一切行わず、全員が同時進行で自由に書き進めながら、
最終的には物語としての統合性を保たなければならないという、
ほとんど悪い冗談みたいな作品だったからだ。

そんな小説、僕は他に聞いたことがない。
しかしながら、この企画を最初に動かしたのは僕であり、
物語としての統合性を保つという役割は、僕が勝手にやらせてもらった。

この『M線上のアリア』という作品は、
2007年にmixiがサイトのリニューアルを行った際に、
新しいmixiのデザインが気に入らない、という愚痴日記を、
mixiを「みく子」という少女に擬人化して書いたことに端を発する。

この「mixi=みく子擬人化日記」に、数名のマイミクが同調し、
互いに小説のような日記を書き始め、それが最終的に13人にも膨れ上がった訳だ。
だから外から見ると、これはほとんど単なる身内の遊びだったようにも思われている。

しかし当時の僕の感覚は少し違った。
まるで身内の遊びだとは思っておらず、むしろ、
「13人も巻き込んでしまったからには、最高の作品に仕上げなければ」
という純然たる想いと、重圧の方が強かった。

同時に、その頃の僕は、
自分の今後に色々と悩んでいた時期でもあったので、
「だけど、そこまでして書き上げたところで、一体何が残るんだろう……」
という葛藤が、常に付きまとっていた。

仕事でも無いのに。創作を仕事にしたいのに、何をしているのだろう。
そう感じながらも毎日、何をしている時でも『M線上のアリア』のことばかり考え、
カーテンを閉め切った暗い部屋で、煙草を吸い、水を飲み、
ただ闇雲に、キーボードを叩いていた。

2008年の夏に、この物語を一冊の本にした。
しかし膨大な文章量となった『M線上のアリア』は一冊では完結できず、
まず初刊を販売した資金を元手に、続刊を作っていこうということになった。
絵に描いたような自転車操業だが、当時はそれしか有効な方法が無かったのだ。

そこで僕は、最終巻まで作れるようになった時の為に、
この作品の本当の最終回――完結編を書いておこう、と考えた。

既にmixiで公開した最終話だけでは解き明かし切れなかった、
13人分の沢山の謎を、スッキリ解決する物語を書いて、
それを最終巻に載せようと、考えたのだ。

落語に「三題噺」というのがある。
これは寄席で演じる際に観客に適当な言葉・題目を出してもらい、
その場で即興で演じる落語のことを言うが、僕はそれが昔から好きで、
自分の作品でも、好んでよく書いていた。

特にmixiという場所では、不特定多数からのお題を募りやすく、
2007年に『惑星のバロック』という作品を書いた際には、
50コくらいのお題が無節操に集まってしまい、
それを24時間以内に書き上げる、ということをやったりもした。

同じようなノリで書き始めた『M線上のアリア』は、
ところが実際には「お題50コ」どころの騒ぎではなかった。
むしろ全てが、13人の作者から提出されたお題だらけの世界だった。
「お題だけで出来た世界」と言っても良かった。

それで、完結編が必要だと思ったのだ。
自分の思い描くように、自由に、書きたいように書く。
あれは、そういう作品では無かったのだけれど、僕は楽しかった。
あれは、僕達が生きる「世界」そのものだった。

完結編は、2008年の6月19日に書き終わった。
完結編を全て書き上げた日、風呂に入りながら一人、

「俺は明日から、何をすれば良いんだろう……」

と思ったことを、今でも覚えている。

実際、全てを書き上げてから当分、
僕には書きたいことが無くなり、何も書けなかった。
それほど、当時の自分の中にあった経験・哲学・技術を全て、
あの時の自分が出来ることの全てを注ぎ込んだのだ。

そして、それを秘密のまま、ずっと眠らせていた。

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今から一ヶ月前、ひとつの作品を完結させた。
2007-2008年に書いた『M線上のアリア』という作品だ。

完結したのは一ヶ月前だが、実際に書き上げたのは、もう3年以上も前だ。
だけれど、その時に感じた事は、今でも変わらない。
――変化を、受け入れる。

あの日、みく子の肌は白くなり、変なパーマをかけて、何処かへ行ってしまった。
僕は、僕達は、何を愛していたんだっけ。何を忘れたんだっけ。
忘れたことさえ忘れてしまった。

本は売れなかったし、苦労はあまり報われなかった。
繋がれた縁が、必ずしも全ての縁が、永遠に続くとは限らない。
終わった何かがあって、それを長いこと秘密にして、誰にも知らせずに。
それでも変化は止まず、また始まり、気が付けば終わるだろう。

繰り返す内に、もう何もかも変わってしまった。
ここは誰の場所だった? 僕の場所だった。しかし今は違う。
いや、今でもそうなのかもしれない。気付かないことに慣れてしまっただけで。

M線上のアリアを共に書いてくれた12人。
音楽や動画を作ってくれたcode2061。
挿絵を描いてくれた砂藤菓子さん。
何かとサポートしてくれた人達。

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意外と大きな作品になっていた。
それぞれに『M線上のアリア』への想いがあって、
それぞれの完結編があるだろう。

僕ひとりの作品ではないのだから、
僕が書き上げたからといって、それが完結編とは限らない。
しかし僕にとっては、これで全て終わりだ。
mixiで生まれた作品だから、mixiで終わらせたかった。

三年以上も前の作品だし、完結編を公開したところで、
どれだけの人が読んでくれたのかは知らない。
本編も、どれだけの人が読んでくれたのかは知らない。

きっと端から見ると、
内輪で盛り上がっている遊びに見えただろう。
だけど僕は真剣だったよ。
とても拙い、しかし正直な、あの頃の僕の全てを注ぎ込んだ。

今の僕には、もう書けない。
書けなくなったことも、やがて忘れるだろう。

あの日、みく子の肌は白くなり、変なパーマをかけて、何処かへ行ってしまった。
僕は、僕達は、何を愛していたんだっけ。何を忘れたんだっけ。
忘れたことさえ忘れてしまった。

そして、きっと、たまに思い出すよ。

僕は本当に、あの作品が大好きだった。

僕は本当に、あの作品が大嫌いだった。

これからも僕達は、変化を受け入れるだろう。


全てに感謝するよ。


ハロー・マイフレンド・バイバイ・アリア。

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[ 2012/01/24 11:57 ] 告知:M線上のアリア | TB(-) | CM(0)
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