VOSTOK8 blog - Astronaut' Monologue TOP  >  2012年07月

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誰かの、何かに。

子供の頃は、何になりたかったっけ。

母親が絵の上手な人だった。
その影響を受けて、僕は絵描きになりたかった。
幼稚園の卒園アルバムには、消防士になりたいと適当に答えた。
だけど本当は、絵描きになりたかった。

サッカー選手になりたかった時もあるし、
こっそりパン屋さんになりたかった時もある。
ウルトラマンにもなりたかった。

ウルトラマンになりたかった時なんかは、
日々、真剣に妄想をしていた。

まず「どうすればウルトラマンに変身できるのか」から考えて、
結果「ドラえもんに"もしもボックス"を借りる」から始まる妄想をしていた。

もしもウルトラマンになれたら――。
もしもボックスに願いをかけて、無事にウルトラマンに変身し、
怪獣と戦い、ちょっとだけ女子にモテる、という妄想を繰り広げていた。

大人になってからは、何になりたかったっけ。

小学生から中学生に。
二年生から三年生に。

そんなに解り易く「何かになる」ことなんて、
世の中に、実はそう多くは無い。

ほとんど全ての物事には、
証明書も無く、決意表明も無く、入学式も卒業式も無い。
只、淡々と流れる時間の中で、自分自身に問いかる。
飲み込み、受け入れ、そして何者かになる。

誰かの友達になってみたい。
きっと僕にも、そんな時期があったのだろう。
僕にとって初めての友達が誰だったのかは、よく覚えていないけれど。

誰かの恋人になってみたい。
きっと僕にも、そんな時期があったのだろう。
自分は誰かの「恋人」なのだと思うと、自転車を漕ぐ足も速くなった。

やがて僕は大人になり、誰かの「夫」になった。

絵描きになりたくて、サッカー選手になりたくて、パン屋さんに憧れ、
ウルトラマンを夢見ていた僕は、誰かと共に人生を歩む人間になった。

絵筆を握ることや、サッカーボールを蹴ることは無くなり、
憧れや空想に胸を躍らせることも無くなった。
決して悲しいことではない。

僕は長いこと、僕にとっての何か、になろうとしていた。
怪獣と戦い、ちょっとだけ女子にモテる、という妄想を繰り広げていたみたいに、
自分の望む道を進み、自分の夢を叶え、自分の存在を世に残したいと、ひたすらに願った。
自分の為の、自分。

それは、それで、素晴らしい生き方だ。

しかし素晴らしい生き方は一つでは無いし、喜びの形も一つでは無い。
達成の仕方も一つでは無く、絶望から希望を掘る方法も一つでは無い。

唯、命だけが一つだ。

全てが自由で際限なく、移ろいやすく形の無い世の中で、
唯、僕等の命だけが、揺るぎなく一つなのだ。
僕は、それを守りたく思ったんだ。

何時の日か、
穏やかな絶望の中で、
僕は天井に手を伸ばしていた。
それは何処にも届かないと思っていた。

今。
全てが自由で際限なく、移ろいやすく形の無い世の中で、
ほんの小さな掌で、世界を掴もうとする君よ。

きっと世界には形なんて無いのだろう。
正解など無くて、不正解さえ無いまま、今日も進んでいる。
それでも君が世界に手を伸ばすなら、僕はその手を掴んでやろうと思うよ。

誰かの、何かに。

僕は、君の父親になるよ。
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[ 2012/07/06 05:37 ] 雑記 | TB(-) | CM(0)
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