VOSTOK8 blog - Astronaut' Monologue TOP  >  2014年03月

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クロノグラフ

世界は緩やかに膨張している。


きっと僕等は昨日より

本日が良い日になると信じているし

本日より明日が、また良い日になると、ずっと信じている。


高まる。

広がる。

膨れる。


宙と空を、自在に。

前後上下左右を、自由に。


しかし物事には終わりがあるように

すべての世界には限りがあるとして。


掘り出し続ける資源には限りがあり

湧き出し続ける真水にも限りがあるように。


もしも宇宙が呼吸しているのだとして

巨大に膨らみ続ける風船が辿るべき

約束された工程は二種類で。


やがて萎んでしまうか。

やがて割れてしまうか。


ああ、それから、もうひとつ。


いっそ止めてしまうか。




【クロノグラフ】




子供の頃に描いたのは

クレヨンで真っ黒に塗りつぶした絵で

親と先生から深刻な表情と残念な評価を受けた絵で

数本のクレヨンで、楽しく色鮮やかに補正された絵だ。


それは三学期の間、教室のうしろの壁に貼られていた。

三学期の終業式が終わったあと、それは全員に返却され

放課後、僕はそれを一階にある大きなゴミ収集場に棄てた。


星空を見るのは好きだ。

大抵の場合、星なんて見えないけれど。

月は見える。-12.7等級。


死にゆくアンタレスが1.09等級で輝き

クエーサーは巨大なジェットを吐き出しながら12.9等級で輝いている。


「3C 273?」

「そ、よく知ってるね」

「初めて発見された、クエーサー」

「ん、厳密には、初めて確認された――」


宇宙が、どれほど強く、速く

本日も膨張しているのだとして

もしくは、収縮しているのだとして。


きっと僕等は昨日より

本日が良い日になると信じているし

本日より明日が、また良い日になると、ずっと信じている。


巨大なジェットが

20万光年の長さを持った、太陽みたいに明るいジェットが

いつか僕等を何処かに連れ去ってしまうとして、まだ信じている。


「定常宇宙論」

「ん?」

「というのがあってね、昔」


フレッド・ホイルは生涯、持論を棄てなかった。

宇宙の大きさは一定で、膨張も収縮もせず

古い銀河は去り、新しい銀河が生まれる。


「変わらない中で、変わるんだ」

「このアパートみたい」


机の上に、細長く、白い封筒が置いてある。

封を切った跡があり、中身は取り出されている。


「もう二年、経った?」


春になれば、窓の外に、花が咲くだろう。


「早いね」

「早いな」


子供の頃は、何も変わらず、何も終わらず

今あるものは、今あるまま、今のまま続くのだと

宇宙は同じ形でいつまでも、そこにあるだろうと

フレッド・ホイルのことは知らなかったけれど

僕は信じていたのだけれど。


「引っ越す?」


もしも宇宙が呼吸しているのだとして

巨大に膨らみ続ける風船が辿るべき

約束された工程は二種類で。


やがて萎んでしまうか。

やがて割れてしまうか。


ああ、それから、もうひとつ。


いっそ止めてしまうか。




「いや、此処にいるよ」




約束は、延長される。

本来、誰と交わす約束でもないのだろうけれど

ペラペラの紙に記入し、捺印し、投函し、完了される。


止まることのない世界で。


もう少し雪が解けて、暖かくなって、花が咲いたら。

二階の窓から、桜の木を眺めて、僕達は二人で、お茶でも飲もう。

今から、それが楽しみだ。
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[ 2014/03/16 13:06 ] 小説 | TB(-) | CM(0)
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