VOSTOK8 blog - Astronaut' Monologue TOP  >  2014年12月

透明

来年の目標は何ですかと、最近よく聞かれる。
まだ決めていない、と答えている。
実際、まだ決めていない。

その前に、今年を振り返る。
振り返ると、何を残せたのかと考えてしまう。

自分なりにがむしゃらに進んだようでもあるが
明らかに迷走し、惰性となり、泥沼にはまった感もある。
自分で自分の首を絞めた。

自覚している。
僕は自ら迷走し、惰性となり、泥沼にはまった。
これを何とかしなければならない。

「2014年は、何を成した一年だったのか?」

もしも自分なりの年表を作るならば
解答はとても少なく、しかし明確だ。

会社を立ち上げた。
娘は正しく成長しているし
妻は献身的で、いつも誠実だ。

僕自身は、大したことは何もできていない。
一応、家族や従業員を食わせることはできている。

恩師と慕っているオーナーや、先輩や
一緒に働いてくれる仲間達と、家族のおかげだ。
僕は世間知らずで、運が良いだけだが、人に助けられた。

家には、あまりいない。
しかし妻は文句ひとつ言わない。

どれだけ慌ただしくても出来立てのご飯があり
どれだけ短い時間でも、家族での食事を望んでくれる。

娘はよく喋るようになり、覚えた歌をうたい、部屋を走る。
抱っこや、お絵かきや、ブロック遊びや、粘土遊びをねだるので
食事後、仕事前の少しの時間だけ、ほんの束の間、いっしょに遊ぶ。

妻は、本当に出来た人間だと思う。
家の中に娘とふたり、勉強をしたり、家事をしたり
繰り返しのような毎日を、文句ひとつ言わずに過ごしている。

正しいとか、正しくないではなく、ただ頭が下がる。
本当にストイックな毎日を、まるで当たり前のように過ごしている。

僕は昔から好き勝手ばかりで、妻には迷惑しかかけたことがない。
はっきり言って、苦労しかかけてない。

だが思い返してみるに、出逢ったばかりの頃から、現在まで
僕が本当に酷いことをしても、この人は文句ひとつ言ったことがない。
まともな収入もない時期に、この人は僕と居ることを選んだのだから相当だ。

ほんの数年前まで、カーテンを閉め切った部屋で
届く宛のない言葉を打っては、芸術家を気取っていた僕は
ジャケットを着て、車を運転し、企画を考え、しかしあの頃と同じに
何を残せるのかと、まだ考えている。

自分なりにがむしゃらに進んだようでもあるが
明らかに迷走し、惰性となり、泥沼にはまった感もある。
自分で自分の首を絞めた。

僕は自ら迷走し、惰性となり、泥沼にはまっている。
そんなことは自分が一番、よく解っている。
これを何とかしなければならない。

来年の目標は、まだ決めていない。

只、もっと透明になりたい。

単純に、シンプルに
清濁を併せて飲み干し
尚、透明になりたい。

真っ直ぐに進みたい。
きれいごとを言い続けたい。
人を傷付け、裏切り、尚、信じたい。

自分なりに正しく、懸命に、何色にでもなりたい。
[ 2014/12/30 03:28 ] 雑記 | TB(-) | CM(0)

ガッシュキラキラ

世間はキラキラしてる。

もうすぐクリスマスだってのに

私達には何てゆーか

余裕というか予定というか

ドキドキしてワクワクするような

要するに、そう、予感ってモンがない。



世間はキラキラしてる。

街灯に飾られた電飾とか

店頭に置かれた贈物とか

赤とか白とか金とか銀とか

あと緑とか

そういう色で代弁される雰囲気の真ん中で

小太りのじいさんが大きな袋を抱えて笑ってる。



世間はキラキラしてる。

もうすぐクリスマスだってのに

今日も学校の課題に追われてます。

そのくせ当日のスケジュールは空っぽで

どうせ一人ならとバイトをする事にした。

クリスマスケーキを売るバイトだ。

ベタだ。

別にいいじゃん。



世間はキラキラしてる。

私に関係ない場所でキラキラしてる。

キラキラしてるのを横目で眺めてる。

例えるなら何てゆーか

そうだなぁ

フレンチクルーラーに対するオールドファッション。



いや違うな。



とにかく私は

当日オシャレをする予定も無ければ

誰かのプレゼントに悩む必要も無い。

ひたすらに売るのだ、ケーキを。

ベタだけど。

いいじゃん。






キラキラしてる何かに対して。


私達がする事は二つだ。


眺めるか、欲しがるか。


あ、それからもう一つ。


諦めるか。












255.jpg
『ガッシュキラキラ』












「お前、ケーキ売んの?」



突然、タダオが話しかけてきた。

コッチは本日の課題に追われながら

忙しく乙女の思想にふけってるというのに。




「あ!そこ手つかないでよ!ガッシュ渇いてないんだから!」


「うっそ!マジで!」


「あぁあぁあぁあ!アンタ!タダオ!」




時すでに遅く。

タダオは塗ったばかりの

赤のアクリルガッシュの上に手を置いた。

ほんとコイツだけはありえない。


ガッシュってのは速乾性のある絵の具だから

すぐに乾くし、重ね塗りにも向いてる。

私の好きな絵の具だ。



「血!見ろよミサエ!血だ!血が!」


「ガッシュだよ、ただの」


「お前は何でそういう事を早く言わないんだ!」


「言ったじゃん。

 てゆーかアンタ、コレ提出、5時なんだけど」




タダオが手をついた部分は

べったりと手形がついてる。

タダオは白い模造紙に手形を押してる。




「おすもうさんみたいでしょ」


「いや、知らんけど」


「5時までって、あと30分しかないじゃん」


「そう、だからアンタと遊んでる時間は無いんです」


「よし、俺が手伝ってやろう、手形つけたお詫びだ」


「え、いいよ、別にそんな」


「いいから」




タダオは私の声を遮って絵筆を持つと

何色かのガッシュをパレットに出した。

人の話を聞かない奴だ。




「ココは何色?」


「えっと…ソコは白かな」


「オッケィ」




タダオは器用に色を塗る。

こう見えてタダオは絵が巧い。

ウチの学校でも飛び抜けて巧い。



タダオは素直な線を引く。

タダオは素直な色を塗る。

タダオの描く絵は好きだった。



タダオの絵はキラキラしてる。

本人はこんな調子なんだけど

タダオの絵はキラキラしてる。

時々どうしようもなく、触れたくなる。



「タダオ、アンタ、手、パリパリ」



さっき付けたばかりの

赤のガッシュが乾いて

赤い細かい粉が紙の上に零れた。



「ああ、ガッシュって乾くの早ぇからなぁ」


「ちょっ…アンタそれなんとかしなさいよ」


「なんとかって言われてもなぁ…ドンマイ!」


「ドンマイの意味がわかんない」



タダオが自分の手の平を眺めながら笑った。

左手の指先で何度か擦ったり掻いたりした。

それからまた素直に笑った。



「よし、じゃ引き続きバリバリ塗りますか!」


「あ!そこ手つかないでよ!塗ったばっか!」


「うっそ!マジで!」


「あぁあぁあぁあ!アンタ!タダオ!」




2回目。

時すでに遅し。

タダオは私が塗ったばかりの

白のアクリルガッシュの上に手を付いた。




「ありえない…」


「ですよね」


「てゆーかね

 色を塗った紙をペタペタ触るとか

 なんてゆーか絵描きとしてありえない」


「ドンマイ!気にすんな!」


「いや、気にしろよ!」


「ドンマイ!人はそうやって成長するんだ!

 俺もそうだった!ミサエ!ドンマイ!」


「いや、アンタがね」






世間はキラキラしてる。

もうすぐクリスマスだってのに

私達には何てゆーか

余裕というか予定というか

ドキドキしてワクワクするような

要するに、そう、予感ってモンがない。



何の予感?

例えば幸せになる予感だとか。

具体的に言うならそうだなぁ。

宝くじに当たる予感とか?



いやそんなんじゃなくて

多分、もっと、こう、身近な。

手軽なようで、手軽じゃない。

そんな予感。






そう、例えば、恋の予感。






「タダオ!最後ソコ、緑だよ!」






世間はキラキラしてる。


キラキラしてる何かに対して。


私達がする事は二つだ。


眺めるか、欲しがるか。


あ、それからもう一つ。


諦めるか。




だけれど覚えておいても

少しも損のない事実がある。

諦める前に知っておかなくちゃ。



私達は積み重ねてる。

色を塗るように積み重ねてる。

色とりどりの今の中から

たった一色を選んで塗る。

塗った色が積み重なって

やがて予感になる。

そういう事実。










「できた!完成!」


「やったー!おわったー!」


「タダオ!今まだ乾いてないからね!

 間違っても絵に触っちゃダメだよ!」


「え、何が?」


「あぁあぁあぁあ!アンタ!タダオ!」


「おぉおぉおぉお!オマエ!ミサエ!」




タダオが塗ったばかりの緑色に

そりゃもう思い切り手を置いた。

そりゃもう思い切りだ。




「アンタ!わざとやってるでしょ!」


「うん!」


「うん!?

 アンタもう!何でそんな事するの!

 ああもう5時じゃん!」





私はタダオの手をどかして

手形の付いた絵を取り上げると

急いで色を塗りなおし

タダオも一緒に塗りなおした。




「今度こそ完成!」


「やったー!おわったー!」


「もうダメだからね!次はないからね!」


「もう触らないよ。もう終わったもん」


「てゆーかさっき一回終わったじゃん!」


「だからさっきので終わったんだってば」


「意味わかんない…

 ま、どうでもいいけどさ…

 じゃ、提出してくる!」





私は教室を出ようと席を立った。


するとタダオが後で声を出した。




「な、ミサエ」


「何?」


「見てみ、コレ」




タダオは

3色のガッシュで汚れた手の平を

大きく開いて私に向けた。




赤色。



白色。



緑色。









「クリスマスみたいでしょ?」










世間はキラキラしてる。

まるで他人事のようにキラキラしてる。

私はソコに行きたくてウズウズしてる。

だけど興味の無いフリをしてこう呟く。

世間は、キラキラしてる。



だけど少しだけ違う。

きっと少しだけ違う。

違いはとても簡単だ。

たった一文字。






「それする為にわざと?」




タダオは答えなかった。

その代わりこう言った。




「クリスマス、ケーキ売るんでしょ?」




世間はキラキラしてた。

赤とか白とか金とか銀とか

あと緑とか

そういう色で代弁される雰囲気の真ん中で

小太りのじいさんが大きな袋を抱えて笑ってた。



世間はキラキラしてた。

だけど今はココに

例えば手の平の真ん中に

アクリルガッシュのクリスマスを連れた

私と同じくらいの背丈の奇妙な男の子が立ってる。






「別にいいよ、買いに来ても」


「外で売りまくってんでしょ」


「うっさい」




教室の窓の外。


雪が降ってる。


タダオが笑ってる。


釣られて私も笑う。




「来ても安くはしないけどね」


「うわ、何だよケチ」


「最後まで居ればタダになるかもね」


「仕方ねぇなぁ。最後まで居るよ、俺」


「ケーキ余ったらだけどね」


「どうせ余るよ。最後まで居るよ、俺」


「仕方ないなぁ」


「仕方ねぇなぁ」










例えば何の予感だっけ。


別に何だって良いけど。


とにかく予感は訪れる。


積み重ねた今のあとで。




絵を提出しよう。


教室に戻ったら


タダオにお礼を言おう。


それから何を話そうか。


そうだ。


どのケーキが余ったら嬉しいか、について。




変えよう。


たった一文字。


私は見方を変えよう。


ほら、とても簡単よ。








何処がキラキラしてる?








世界はキラキラしてる。







私達の世界は、キラキラしてる。
[ 2014/12/21 01:32 ] 小説 | TB(-) | CM(0)

art

marts.jpg

特別なモノは

特別なモノでは ナクなった

僕とキミのモノは

僕とキミのモノでは ナクなった


例えば 僕のための ウタが

僕だけのための ウタでは なかったみたいに

ああ それから 僕のための キミが

僕だけのための キミでは なかったみたいに


人差し指に 火星の衛星を 乗せて

キミは満足そうに 欠落してしまった と 笑って

僕は 土星の輪を 持て余していた

約束なんか 嫌いで


ああ 宇宙は ボクラだけのモノでは ナクなった


とてつもなくて ひろすぎて それは初めからで

知らなかっただけで 知ろうともせずに 僕は世界を語って

キミはヒレを生やして 泳ぐように飛んで 跳ねて消えて 消えた

僕は地面を這うように 手足をもがれて這うように 泳ぎ また 飛ぶよ


特別なモノは

特別なモノでは ナクなった

僕とキミのモノは

僕とキミのモノでは ナクなった


例えば 僕のための キミが

僕だけのための キミでは なかったみたいに

ああ それから 僕のための イマが

僕だけのための イマでは なかったみたいに


人差し指に 火星の衛星を 乗せて

キミは満足そうに 欠落してしまった と 笑って

僕は 土星の輪を 持て余していた

約束なんか 嫌いで


水だらけの豊潤な惑星だよ ニコ

まだ 死んでなど いない

沈んでも 浮かぶだけだ

呼吸だけ忘れるな


水だらけの豊潤な惑星だよ ニコ

生やしたヒレで 泳ぐならば

ソコは もうキミの場所だよ

呼吸だけ忘れるな


特別なモノは

特別なモノでは ナクなった

当たり前になって もう 笑えるくらい


僕とキミは

僕とキミでは ナクなった

キミのためのイマだ もう 笑えるといい


僕ならば 何度でも手を伸ばし

這うように 泳ぎ また 飛ぶよ
[ 2014/12/03 03:26 ] 詩歌 | TB(-) | CM(0)
目次
★説明




★短編






★長編小説














★短編






★お笑い








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