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神田駅 あとがき前編



※この「あとがき」は【神田駅】を書く事になった経緯を、
 わざと物語的に書いた、小説風ドキュメンタリー系あとがきです。
 誇張した演出・表現が多々ございますが、どうぞ気楽に読んでください。
 これは小説ではありません。
--------

7月6日の太陽は、夏が始まる少し前の太陽で、
世間的には七夕の一日前の太陽で、穏やかな重さを伴う太陽だった。
絵本作家のそらさんと会ったのは、そのような7月6日だった。

地下鉄を降りて、腕時計を見ると、16時30分を回っていた。
待ち合わせ時間に少し遅れそうだった僕は、街中を走っていた。
放課後、デザイン学校の生徒達が、僕が来た道を、逆方向に歩いて行く。
地下鉄の駅に向かっているのだろう。

そらさんは普段、デザイン学校で先生をしたりもしている。
今、僕が向かっているのがそこで、授業が終わる時間が16時30分だった。
要するに、今、僕は「軽く遅刻をしている」状況に置かれているという訳だ。

駅から歩いて五分、というイメージで走っていたのだけれど、
どうやら出口を間違えたらしく、一番遠い場所から走っているようだった。
5分走っても辿り着かないので、僕は軽く歩いた。(遅刻してるのに)

通りの向こうから、女性が歩いてきて、僕を見付けると手を挙げた。
そらさんだった。
そらさんは笑顔で、僕を見付けると小走りになった。

遅刻している側が歩いているのに、遅刻された側が走っている。
これは申し訳ないと、せめて走っているフリをしようとしたが、遅かった。
そらさんは僕の元に辿り着くと「ごめんね、授業が遅くなって」と言った。

僕は「いやいや、そらさんが謝る必要は何処にもない」と思いながら、
今さっきまでは走っていたのですよ、という自分を伝えようと、
わざと大袈裟に息を吸ったり吐いたりしながら「こんにちは」と言った。
それが僕の、7月6日の始まりだった。

我ながら、不細工な挨拶だった。



【神田駅】 あとがき前編



話は一旦、数日前に遡る。
当時、僕はblogで【飢える皇帝】という物語を書いていた。
カレーライスが好きなのに、生まれて一度も食べた事がない皇帝の話で、
僕としては秀逸な設定だと思っていたのだけれど、読者の反応が薄くて、
勝手に「惨敗だ」と切り捨てて、終わらせてしまった物語だった。

それは僕にとって、すごく悲しい出来事だった。
自分が文章を書き続けなければならない目的や理由なんて、
僕にとっては何時だって不鮮明だけれど、その時は、より不鮮明だった。

その出来事の悔しさを、僕はmixiの日記に書いた。
それは作家という自覚があるならば、良くない事だと思うけれど、
僕は、僕という人間は、そういう事を書いてしまう人間だと思うし、
結果的に、それは書いて良かった事だと思っている。

その日記を読んだそらさんからメールが届いたのは、次の日だったはず。
そこには書き手としての共感もあっただろうし、同情もあっただろうし、
ほんのちょっとの仲間意識を感じてくれたのかもしれないけれど、
とにかく「一緒に何かやりたいですね」という内容が書いてあった。

そらさん、という人物は、しっかりとした実績を持って活動している、
本職のイラストレーターだ。(※そらさんプロフィール
僕なんか、偉そうに言っても、自分の好きな事をタラタラやってるだけで、
別に大した実績なんか無いし、それは本当に恐れ多い誘いだと思った。

「いや、どうせ俺なんて……」

と言いたくなるような誘いだった。
その上「もう文章なんて辞めたらぁ」と思ってるような時期だった。
それでも、僕はココから動きたかった。
数日前の惨敗なんて忘れてしまいたかったし、僕は前に進みたかった。

「解りました、こちらこそ是非、お願いします」

そのような返事を書いた。
そこで話を戻すけれど、7月6日、16時30分。
そうして誘ってくれた人との待ち合わせに、僕は遅刻したという事になる。
正確に言うと待ち合わせ時間は16時40分だったから、
時間ギリギリだったと言えるし、やっぱり少し遅れていたとも言える。

「とりあえず何処かに座りましょうか」

そらさんが言って、僕等は並んで歩いた。
放課後の学生達と逆方向に歩き、何本かの横断歩道を渡り、
道を少し曲がった場所に、大きな木が植えてある公園のベンチがあった。

「遅刻したお詫びに」と言って、僕はラムネを買った。
遅刻したお詫びが100円程度のラムネというのも、我ながらどうだろう。
それでも、そらさんは笑って「ありがとう」と受け取った。

公園のベンチは、道路沿いにあるにも関わらず、意外と静かだった。
最初、僕等は他愛のない話をした。
学校の先生というのはどんな気持ちなのか、だとか。
誰かが捨てた空缶があるから、これは灰皿代わりになる、だとか。
街の中にこういう公園があると、ちょっと心が休まるモンだよね、だとか。

大きな木のおかげで、太陽の光は届かなかった。
それは少し肌寒いくらいで、そらさんはラムネを飲み干すと、
女性らしい肌寒そうな仕草で「場所を変えて話しましょ」と言った。
僕等はベンチを立って、何処か紅茶でも飲める店、を探した。

7月6日の太陽は、夏が始まる少し前の太陽で、
世間的には七夕の一日前の太陽で、穏やかな重さを伴う太陽だった。
絵本作家のそらさんと会ったのは、そのような7月6日だった。
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[ 2007/08/29 16:38 ] 長編:神田駅 | TB(0) | CM(1)
リアルな話になってきましたね~
いつもと少し違う雰囲気を楽しませてもらってます( ´∀`)
[ 2007/08/30 18:13 ] [ 編集 ]
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