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自転車と春



それで僕は自転車に乗って、世界の小ささってのを確かめてやろうと思った。

行こうと思えば、何処へだって行ける。
お気に入りのペダルを回転させて、雪溶けの道なんか気にせずに、何処へだって行ける。
時速60kmで流れる風景に季節を感じたり、鼻腔をくすぐる花の香りに、漕ぐ足を止める事だって出来る。

腹が減ればコンビニでパンを買って、寂しくなれば携帯電話でメールでもするよ。
とにかく僕は、君がいなくなった世界ってのが、どれほど小さいモノなのかってのを知りたいんだ。
君の住む町は、此処からどれほど離れているんだろう? 行けない事は無いけれど、行こうとしないだけだ。

行こうと思えば、何処へだって行ける。
真新しい自転車の、真赤なサドルに腰を下して、もう何にも気にせずにいよう。
春は来てしまったし、夏は来るだろうし、秋が来るのも知らない訳ではないけれど、僕は気にせずにいよう。

また冬が来る時に、僕は何処にいるのかって事だけを、考えていよう。

春の夕暮れ。川原沿い。
自転車を降りて、沈む太陽を眺める。
僕の背後を、親子連れの自転車が二台、通り過ぎて行く。

もしも世界が小さいならば、また何処かで、君に会えるかな。
走り続けていれば、また会えるんだろうか。
そんなの考えるだけ無意味だ。

上空を二羽の鳥が、
さっきの親子とは逆方向から飛んで来て、
僕の頭上を通り越して行くと、やがて小さく見えなくなった。

ああ、世界は大きくて厭になる。

君に会いたいな。

少し傾いた自転車はオレンジ色に染まり、静かに輝いて見えた。
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[ 2008/03/20 14:22 ] 小説 | TB(-) | CM(-)
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