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青色1号 第四話

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何故、水野は知っている?
僕が鉄砲を持っている事は、誰も知らないはずだ。鉄砲を拾ったのは二週間前。自転車を買った日。
「私、見ちゃったんだよね」水野は頬杖を突いて僕を見上げると、ほとんど小悪魔のような笑顔を浮かべた。

「何を?」
「歩道橋の真ん中で、鉄砲を拾ったトコ」
「誰が?」

君が――と言いかけて、水野は説明を始めた。
二週間前、僕は新しい自転車を買った。新しい町に住み始めて、徒歩だけなのは不便だった。
自転車に乗れば、何処にでも行けるような気がした。だから買った。実際には一度も乗っていない。
自転車を買った帰り道(その時、僕は自転車に乗らずに、手で押しながら歩いていた)、僕は鉄砲を拾った。

鉄砲だと思って拾った訳では無い。
自転車を押しながら、何故だか僕は歩道橋の階段を昇った。
歩道橋の真ん中に、まるで棄てた古雑誌のように、青色のビニールに包まれた物体があった。
自転車の前輪が、固い物体に当たったので、僕はそれを拾い上げた。ズシリと重いそれは、鉄砲だった。

「わざわざ自転車で歩道橋を渡ろうとしてるから、気になっちゃって」
僕を尾行していたのだ、と水野は言った。そして見たのだ、僕が鉄砲を拾った、その瞬間を。
「拾って無いよ」
「拾ったよ、青色のビニールを解いたトコ、ちゃんと見たもん」
もしかしたら水野は、それを至近距離で見ていたのかもしれない。
僕は気付かなかったし、気付いたとしても、それが大学の同級生だとは思わなかったかもしれない。

「あれ、鉄砲だったよね。玩具じゃないよ、あれは」
「何で、そんなの判る?」
「女の勘」

まるで確証にならない。今、此処で「あれは玩具だった」と言えば、それで済む話だ。
ところが次に僕の口から飛び出した台詞は、僕の思惑とは裏腹に、水野の目を輝かせるに充分だった。

「何で、僕とコンビニ強盗なんか?」
「憧れない? 私、一回やってみたかったのよね、コンビニ強盗」
まるで初めてスノー・ボードに挑戦する乙女のように、胸の前で両手を組んで水野は言った。
「だから、何で、その相手が僕じゃなきゃ駄目なの?」

水野は両手を組んだまま、視点だけを動かして、一直線に僕を見た。
「鉄砲、持ってるから」
「じゃあ貸してやるよ、一人でやれよ」
「逃走手段が必要でしょ、自転車、持ってるじゃん」
「じゃあ鉄砲も、自転車も、両方貸してやるよ、一人でやれよ」

「それにね!」
僕の話も聞かずに、水野は僕の両手を鷲掴みする。
「何だよ」
「Black Sabbath、聴きたいじゃない」
「は?」
「コンビニ強盗の最中に、私達はBlack Sabbathを聴くの!」

Black Sabbath?コンビニ強盗の最中に?「何の為に?」
「演出! 雰囲気の演出!だって BGMが無いと、気分が盛り上がらないじゃない!」
「……じゃあ、iPodも貸してやるよ、だからコンビニ強盗は一人で、」水野が両手で僕の口を塞ぐ。
「私、機械苦手なの。ね、知ってるでしょ?」

梅雨は明け、きっと明日からは晴れだ。
紫陽花は枯れ、また次の種が、新しい芽を出そうとしている。
講義室の窓は、まだ濡れているが、雨音は聞こえない。きっと雨は止んでいる。

「君が居ないと駄目なの、よろしく頼むよ、相棒?」

全てを言い終えると、水野は満足そうな笑顔を見せた。
耳の奥では、相変わらずBlack Sabbathが流れていたけれど、よく聴こえなかった。
止んだはずの雨音だけが、僕の頭の中で、まだ延々と鳴り響いていた。地面に降り落ちる、雨。

その日の夜。
僕と水野は待ち合わせ、初めてのコンビニ強盗に出かけた。
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[ 2010/11/01 04:00 ] 長編:青色1号 | TB(-) | CM(-)
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