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東京コミケ紀行 其の一



■前文
8月16・17・18日。僕は東京にいた。
とても短い時間だったけれど、東京の空気というものを吸ってきた。
東京という町は不思議な町だ。その中で暮らす人達は、気付かないかもしれないけれど。

中学生の頃、初めてDeep Purpleを聴いて、それだけでロックの全てを知った顔になったように、
たった三日間、東京を通り過ぎたというだけで、僕は人生の何たるかを、少しだけ知った気分に浸っている。
だけれど全てを知った訳では無い事は明白で、只、「何かを知ったような気分にさせるような何か」が、
多分、あの町にはあるのだろう。

今から、その三日間を振り返る文章を書いていこうと思う。
写真は無い。恐らく長文になるであろう今回の文章を読んで頂くにあたって、読者の皆さんにとっては、
写真を眺めながら読むのが楽しみの一つになるであろう事は想像出来るけれど、写真は撮らなかった。
代わりに、出来るだけ鮮明に、克明に、僕の記憶に残った風景を、丁寧に、文字に残していこうと思う。
僕は文章書きであるから、それが僕が皆さんに伝えられる、最も誠実で、最も有効な手段なのだ。

今回の短い旅にあたって、現地で出会えた全ての人と、M線上のアリアに関わる全ての人、
また企画責任者のSOYUZと、旅全般において尽力してくれた後輩・ちゅい太君に最大の感謝を伝えて、
この文章を捧げたいと思う。

--------
■8月16日
実は、東京に行く事が決まってから約二ヶ月近く、ずっと僕は緊張していた。
本当に行きたくなかったのだ。いや、簡単に「行きたくなかった」と言うと、誤解されるかもしれない。
行きたかった。行かなければならないとも思っていた。それも含めて、僕は本当に行きたくなかったのだ。

矛盾していると思うだろうが、話は簡単。怖かったのだ。
何言ってんだと思われるだろうが、怖かったものは怖かったので仕方が無い。
何が怖いのかと言えば、まず見知らぬ土地に行くのが怖かった。飛行機に乗るのも怖かった。
しかも自分の今後の人生に、直接影響する旅になるかもしれない事が、何よりも一番怖かったのだ。

僕は生粋のインドアである。誤解されたくは無いが、仕事もするし、笑顔で会話もするし、友人と外で遊ぶが、
本質的に完全にインドアなのだ。家にいる時が一番幸せなのだ。物事が変化するのが本当に苦手なのだ。
このままで幸せなら、別にこのままで良いではないかと思う人間なのだ。恐らく、それが僕の本質なのだ。

ところが僕の中には二面あり、変化を求める、上昇したい衝動を持て余す、非常に面倒くさい一面があり、
それが常に、何年間も、僕を突き動かし続けている。自分自身に突き動かされた結果が、今なのである。
だから【M線上のアリア】という作品が完成し、本が完成し、東京に行く事が決まったのは自分の責任であり、
最後の一段、要するに「扉を開けて外に出ろ」という段階で、僕は怖がっているに過ぎなかったのだ。

それで僕は、東京に行く覚悟を決めた。
大袈裟に聞こえるかもしれないが、僕にとって未知なる場所へ進むのは、気が遠くなるほど面倒くさく、
出来る事なら避けて通りたく、逃げても良いなら逃げ出したく、行かずに済むなら行きたくない事だったのだ。

そんな僕を見かねてか、それとも僕の口車に乗ってか、後輩のちゅい太君が同行してくれる事となった。
僕の中で、彼は現在、僕と一緒に過ごす時間が一番多い男である。
僕が、自分の中の不安や、彼自身の将来の話をしてる時に、半分冗談・半分本気で「東京行かない?」と、
誘ってみたところ、彼は意外なほど呆気なく快諾してくれた。「東京、行った事ないし!」とか言って。
僕は後輩に恵まれている。先輩に恵まれなかった分、後輩には本当に恵まれていると思う。

彼に与えられたのは、今回の旅のメイン・テーマである「コミケのお手伝い」という役割である。
このようにして僕とちゅい太君は、三日間、一緒に旅をする事となった。
(この件に関しては、最終的に快諾してくれた仕事関係者の方々にも、深く感謝したい。)

当日、関東地方は雷雨。
19時55分の便で出発する予定だったが、雷雲の影響で飛行機が一時間ほど遅れるという。
翌日は早朝から行動する予定なので、出来るだけ早めに到着して休んでおきたいところなのだが、
勝手がよく解らない僕は、まぁ仕方ないと、持参したデジタル・ムービー・カメラなどを使って遊んでいた。
雷雲が発生しているという状況が、どういう事なのか、いまいち理解していなかったのである。

「飛ぶ」という事が、長い間、僕の中で一つのテーマだった。
それは【VOSTOK8】という宇宙ロケットをモチーフにしたサイトを見てもそうであるし、
例えば【鉛色のサンデー】という作品でも、飛行機や弾丸が、物語自体の命題になっている。
更には【M線上のアリア】という作品でも、「飛ぶ」事が鍵を握る重大な場面を、僕は描いているのだ。
ところが僕自身は、飛ぶ事を怖れていた。飛ばないくせに、飛びたがっていたのだ。

飛行機に乗って「飛ぶ」という行為が、ずっと僕が求めてきた「それ」と同じかどうかは解らない。
だけれど、とにかく、おおよそ思い付く限りの中で一番現実的で、一番直接的な「飛ぶ」という行為が、
今、僕の目の前に、雷雲を渦巻かせながら、立っている。この時、僕はそういう気分だった。

数十分後、場内のアナウンスが運航の再開を告げた。
それで僕等は荷物を抱えて、飛行機に乗り込んだ。この時の僕の気持ちを、想像してみて欲しい。
本当に怖かったのだ。自分の住み慣れた場所を離れて、まるで知らない場所に進もうとする事が。
情けないと言われても構わない。僕は本当に怖かったのだ。

飛行機の座席に腰を下ろし、低い振動を感じながら、この時、僕が考えていた事は、
不思議なほど【鉛色のサンデー】という、過去に自分が書いた小説の事だった。
ああ、今ならば、きっともっと良い文章が書けるだろうな、と僕は思った。
文乃の台詞も、高広の台詞も、もっとリアルに、もっと痛々しく、感じる事が出来たのだ。

「飛行機は嫌い」と文乃が言って、「理由をくれ」と高広が言う。
弾丸を隠したまま、撃ち出す事も出来ない。その気持ちが痛いほど、理解出来たのだ。
そして、高広が発砲する、あの瞬間を。

エンジン音が響いて、背中にGを感じた。
加速。加速。走る。飛ぶ。周りの人達は当たり前のような顔をしていた。
ああ、僕は飛ぶのだな、と、まるで他人事のように、小説の中の人物のように、僕は目を閉じた。
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[ 2008/08/20 14:53 ] 告知:M線上のアリア | TB(-) | CM(-)
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