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東京コミケ紀行 其の四



■8月17日
ムスリム達にメッカがあるように、オタク達にはコミケがある。
中国に北京、韓国にソウル、オーストラリアにシドニー、アメリカにはニューヨークがあるように、
オタク達には国際展示場がある。聖地、聖域、サンクチュアリ。

朝8時、僕等はコミケ会場、国際展示場こと、東京ビックサイトに立っていた。
人混みを掻き分けて遠く、国際展示場を発見した時の感動と言ったら、三蔵法師が天竺に到着した時か、
映画『地雷を踏んだらサヨウナラ』で、浅野忠信がアンコール・ワットを発見した時のような、それだった。
「おお……アンコール・ワット……」
それにしても列、列、長蛇の列。これは正しく平成日本に生き残った巡礼行事である。
サークル参加者の入場は既に始まっており、携帯電話にメールが入った。

「あ、しのめんさん、もう到着してるって」
続けてメール。
「やべ、志津さんも到着してるみたい!」

企画責任者・SOYUZの三人の内、二人が会場に到着しているとの事。
残りの一人、要するに僕はその頃、コンビニで呑気にウーロン茶を買っていた。水分補給を忘れる無かれ。
何せ会場内は嫌になるほど暑いと聞かされていたので、水分補給だけは気を付けておきたかったのだ。
只でさえ完徹状態であるから、途中で倒れる訳にはいくまい。あえて食事を摂るのは止めておいた。
それこそ途中でお腹が痛くなったり、皆の前で体調を崩して元気が無くなるのだけは、本当に嫌だったのだ。
今日だけは完璧な状態で過ごしたかった。(まぁ、寝てない時点で既に駄目なのだけれど)

ちゅい太君は一般入場になるので途中で一度別れ、一人スタッフ用のチケットを持って会場に入っていく。
ああ、迷う。何と複雑な道のりなのか。考えてみるに東京に来てから、一人になる瞬間は今が初である。
やばい、怖い。東京、めっちゃ怖い。東京っていうか一人が怖い。皆、こんなに近いのに一人ぼっちみたい。
大都会・東京で、アタシ迷い込んだ一羽の蝶みたい。……などと、一人で脳内妄想を嗜みながら歩く。

我々のブースは「西地区 る 02b」である。
覚える気はまったく無かったのだが、志津さんがmixiの名前欄に「志津@西地区る02b」などと、
このブース番号を二ヶ月近くも表記し続けていたので、嫌でも覚えてしまった。ああ、洗脳とは恐ろしい。
頭の中で「る、る、る」などと唱えていると「る」を発見した。いよいよ現場は近い。否が応にも鼓動が早まる。

この辺だよな……とウロウロしてみるが、イマイチ解らない。
あれれ?と少女漫画のヒロインのように首をひねっていると、見覚えのある顔を発見した。このイケメンは、
「あ、しのめんさん」
知ってる、知ってる、この顔、写真で見た事ある。
若くして二児の父、我がSOYUZ期待のメカニック・しのめんさんじゃないですか。
「ちょっと遅いんじゃなぁい?」
しのめんさんの第一声は、それだった。何とフランクな。デートの待ち合わせみたいじゃないですか。
あはははは、と笑って誤魔化す。床に荷物を置いて、顔を上げる。
同時に、志津さん発見。何処かに行っていて、丁度、ブースに戻って来たところだったらしい。笑顔である。

知ってる。ものすごく知ってる。何だったら二人共、ほとんど毎日、会話してる。
だけれど会うのは、この時が初めてだった。それにしても何というウェルカム状態であろうか。笑顔である。
「迷ったでしょ?」志津さんに言われて、僕は「あ、はい、何か、まぁ、あははは」と答えた。一応、緊張する。

この辺が、ネットで出逢った者同士の面白さだ。
物凄く知っているのに、初めて。緊張するのも可笑しいが、緊張しないのも微妙だ。
しかし、すぐに思い直す。今更、緊張する意味が無い。相手は志津さんと、しのめんさんなのだ。
初めて会うとは言え、散々、気心知れた仲では無いか。運命共同体。さぁ、ドンと来い!

志津さんと、しのめんさんは、本当にイメージ通りで違和感が無く、数分で緊張は消えていった。
「ああ、こんな顔で、こんな事言ってたんだなぁ」などと、しみじみ想う。そこに違和感が無い。
二人共、実に自然体なのだ。我々が出逢い、SOYUZというチームを結成して、結構な月日が経ったが、
なるほど、そこに絶妙なバランスが発生している事を、僕は改めて発見した。やはり、それは奇跡的なのだ。

こんな事を言うと、あとで二人に怒られるかもしれないが、SOYUZという場所は、少なくとも僕にとって、
「僕のワガママを一緒に叶えてくれる、ドラえもんみたいな人達」という一面がある。
勿論、それが全てでは無い。だけれど、この「ドラえもんみたいな人達」という表現は、言いえて妙だと思う。
ドラえもんという存在は、年齢不詳である。同年代の友人のようでもあるし、兄弟のようでもある。
時には保護者のようでもあり、だからこそ、のび太はドラえもんと、時にケンカし、時に泣きついて甘える。

SOYUZにおける僕のワガママは、本当にワガママなのだ。
急に思い付いたように「こんな事したい!」と言い出したり「やっぱり変更したい!」と言い出したり、
急に怒ったり、急に落ち込んだり、また元気になって「こんな事するぞ!」と叫んだりする時、フと見ると、
志津さんと、しのめんさんは、常に飄々と、「はいはい、今度はそれやりたいの?」みたいな顔をしている。
ドラえもんがドラ焼きでも食べながら「しょうがないなぁ……」と言って秘密道具でも出すように、笑っている。

SOYUZは僕にとって、ドラえもんの四次元ポケットみたいな場所だ。
僕は、のび太だろう。一人じゃ解決できないけれど、このままじゃ嫌だとワガママを言って部屋に飛び込む。
そこには友人なんだか、兄弟なんだか、保護者なんだかよく解らない二人が座っていて。「しょうがないなぁ」
一緒に本を作る。僕のワガママが、夢が、また一個叶った。勿論、それは僕一人だけの夢では無い。

M線上のアリアという物語を、一緒に書いてくれた12人の仲間。それを読んでくれている人達。
何時の間にか、それは大きな形になって、みんなのモノになった。素晴らしいじゃないか。オレンジ色の本。
SOYUZという場所が奇跡的なバランスの上に成り立っているのは、性格や、年齢や、立場や、得意分野や、
物の見方がバラバラである事や、男同士でも男と女でも無く、三人が入り混じっているおかげであろう。
そして、何より二人は大人として成熟しているの対して、僕だけが子供っぽいままである事。
お恥ずかしい話ではあるが、これは多分、重大な要素なのだろうなと、僕は思った。

僕等三人は、一般開場までの時間を、ひたすらブースの準備に費やしていた。
しのめんさんが軍手をはめ、本を綺麗に並べる。志津さんが大量の本カバーを折り畳み、表紙に付ける。
僕は真剣な表情で「コスプレのお姉ちゃん、何処にいるのかなぁ」と考える。(いや、ちゃんと働いてましたよ)

この時、会場内は異常に暑かった。まだ朝早く、会場内に冷房が行き回ってないのだろう。
黙っていても汗が出てくるくらい暑かった。このままだと多分、午前中で死ねる。多分、余裕で倒れる。
すると突然、背中に風を感じ始めた。ようやく冷房が動き始めたのだ。一般開場の時刻が近付き始めていた。

ムスリム達にメッカがあるように、オタク達にはコミケがある。
中国に北京、韓国にソウル、オーストラリアにシドニー、アメリカにはニューヨークがあるように、
オタク達には国際展示場がある。聖地、聖域、サンクチュアリ。

そして聖なる扉は開かれた。
会場内に雪崩れ込む、平成日本のムスリムとも呼ぶべき巡礼者達。
さぁ、いよいよ本番なのだ。
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[ 2008/08/22 16:13 ] 告知:M線上のアリア | TB(-) | CM(-)
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