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東京コミケ紀行 其の六



■車内
打ち上げは渋谷のカラオケ屋にて行われた。
渋谷。怖すぎるじゃないか。漫画『ろくでなしBLUES』でいうと、鬼塚がいる町・渋谷。
絶対、歩いてる人達、ランチコート着てると思う。スタンガンとか催涙スプレー隠し持ってると思う。

そんな摩天楼都市・渋谷に、我々は車で移動していた。
何故、車で移動しているのかというと、黒さんの車に乗せてもらっていたから、である。
この時、移動は「自動車組」と「電車組」に分けられていた。何故、僕が「自動車組」なのかというと、
何を隠そう、偉いからである。……冗談です。単に、重たいダンボール箱を持ち運んでいたから、である。

このダンボール箱、コミケ用に搬入しておいた大量のアリア本の在庫が入っている。
行きは直接、印刷会社からコミケ会場に郵送してもらったのだが、帰りは自分で持ち運ばなければならない。
とりあえず黒さんの車のトランクに載せてもらって、そのまま我々は車で渋谷に移動、という事になったのだ。
どうでも良いが、この箱、マジめちゃくちゃ重たい。腰に来る。途中で地面に置いて休みたいくらいなのだが、
もう一個の箱を運んでいるサクさんが「自分との戦いだ!」とか何とか言って、一回も休もうとしないので、
こちらも負けず嫌いなモンだから、休む訳にいかなくなった。ちょ、お前、一回くらい休めよ、コノヤロー!

自動車組のメンバーは、僕、黒さん、サクさん、るど嬢、ちゅい太君の五人だった。
まさか東京に来て、車で移動できると思わなかったので、僕は感動していた。涼しいし、煙草も吸える。
この時、会ってから初めて本当にゆっくりと、黒さんや、サクさんや、るど嬢と会話する事が出来た。
るど嬢が「この人、本当に初対面なのかな?」と不思議に思うくらい、本当にずっと喋り続けているので、
車内に変な沈黙も無く、変に気を使う必要がなかった。その速射砲のようなトークに、少し感動すら覚えた。

色々と、気付いた事がある。

るど嬢は「私、執筆陣じゃないんだけどね!」なんて、自身をギャグにして語っていたけれど、
この日、ほとんど初対面の執筆陣が互いに気を使わずに済んだ理由に、るど嬢の存在は大きかったと思う。
確かに執筆陣じゃないのに「この人イベンターなんじゃないか」ってくらい目立ってた。めっちゃ仕切ってた。
そして、きっと人見知りで、引っ込み思案のはずのサクさんを、るど嬢は上手に引き立たせていたと思う。

サクさん自身は、本当に「愛されキャラ」だ。きっと本人が思っている以上に、彼は周りから愛されている。
この日、サクさん自身も、とても良いムードメーカーだった。皆が、彼の言葉や行動で、楽しい気分になれた。
彼の中には本当に大きな可能性があって、もっともっと世に出て良い人間だと、僕は思っている。
似た者同士だと思っているからこそ言うが、僕の事なんか上手に利用して、アリアを良い意味で利用して、
サクさん、君はもっと世の中に、言葉を発さなければならないよ。君は、君が思う以上に、愛されている。
そして、そんな世界を、もっと君は愛さなければならないよ。

黒さんは、本当にさりげなく、周囲に気を使っている人だと思う。
決して出しゃばる事はしないけれど、とてもさりげなく、僕等に気配りしている事を感じる。
例えば、この時、車内は涼しかったのだけれど、大阪暮らしの黒さんには、きっと寒いくらいだったと思う。
僕とちゅい太君は北海道暮らしだから「暑い暑い」と言ってたけれど、後から聞けば、彼は冷え性らしいし。

車内の音楽も、僕がロック好きだという事を知っていて、わざわざNirvanaを流してくれた。
それから、以前に僕がmixiの日記で「機動戦士ガンダムの劇中歌"哀戦士"が好きだ」とか書いて、
「カラオケで"哀戦士"を唄う人とは、友達になれる」と書いたのを覚えていて、それも流してくれたので笑った。
しかもGacktによるカヴァーバージョンだった。正直、僕はGacktバージョンは聴いた事が無かったけれど、
その気持ちが嬉しくて、また笑った。車内での会話も弾み、僕等は目的地・渋谷に到着した。

――まさか、この時は、その「哀戦士」が、あんな悲劇を呼ぶとは想像もしていなかった。

--------
■カラオケ屋
電車組は既にカラオケ屋に到着していて、僕等は右も左も解らぬ渋谷で、目的の店を探した。
途中、雨の中を卵茶さんが迎えに来てくれる。何たる男前っぷりだろうか。惚れる。雨降ってんのに。
エレベーターで4階に上がり、ルームの扉を開けると、電車組がソファに座っていた。少し、人数が足りない。
というのも、女性陣がドリンクを用意して、運んでくれているかららしい。何と気が利く女の子達なのだろうか。
素晴らしい。平成の世に、まだ大和撫子は死んでいなかった。

改めて全員集合。総勢14人ほどの大所帯である。
各々、グラスを手に取り、しのめんさんから「じゃあ、オレンジさん、乾杯の音頭を」との一言。
マジっスか。自分、乾杯とか仕切っちゃって大丈夫っスか。ボケた方が良いッスか。あ、普通で良いっスか。
「はい、じゃ、お疲れ様です、乾杯!」
すごく普通に乾杯。ボケときゃ良かった。「ルネッサ~ンス!」とか言って、ここで一回スベっときゃ良かった。
そう、ここで一回スベっときゃ、後が楽だった。

各自、お話に花を咲かせても良かったのだが、ここはカラオケ屋。ご存知、お歌を唄う場所である。
人というには不思議なもので、どうせ後から唄うのに、初っ端、一人目、一曲目を唄うのは躊躇するのだ。
という訳で、この時も「あ、どぞどぞ」「いえいえ、お先にどうぞ」という、よくありがちな雰囲気だった。
僕は別に歌っても歌わなくても良かったのだが、当然「でも最初に唄うのは嫌だなぁ」と思っていた。

すると、何でか、どういう理由かまったく解らないが「まずはオレンジさんが」という雰囲気になっていた。
いやいや、意味が解らない。何だったら一番最後、紅白の北島サブちゃんのポジションで歌わせて欲しい。
何でいきなりそんな、w-inds.みたいなポジションで歌わなければならないのか。

ダメ押しのように「じゃあ、M線上のアリアの執筆順で!」という事に、話が進んでいる。
一番最初に書いたのは誰だ?……ワシやないか!いやいやいやいや。本気で嫌がる僕に向かって、
るど嬢から、忘れもしない、鬼のような指令。「あ、もう"哀戦士"入れたから」……何でだよ!

ちょ、待て!コラ!待て待て待て待て!無常にも流れ始めるイントロ。
いや、確かに数十分前に、その曲聴いて盛り上がったよ?でも普通の人「哀戦士」なんか知らないって!
てか一曲目からアニソンかい!アニメ・ソングかい!しかもGacktバージョンかい!さっき初めて聴いたわ!
待て待て待て待て!落ち着け!ほら皆も引いてるじゃnいや全然引いて無いわ!むしろ盛り上がってるわ!
盛り上がってるというか「はい!はい!はい!はい!」とか手拍子始まってるわ!何でだよ!哀戦士だぞ!
死に往く男達は守るべき女達に何を残すのか問うような歌に、手拍子てお前ら!全員バカなんじゃないか!
てかイントロ終わるわ!これ唄うしかないわ!唄ってもいいけど絶対スベるわ!責任持てないわ!嗚呼……

はい、スベリました。

そりゃスベるよ。だってGacktバージョン知らないもん。さって初めて聴いたもん。何か微妙に違ってたもん。
最初の「哀~」ってガクトっぽく唄ったトコだけ、ちょっとウケたわ。そこだけ美味しかったわ。残り、悪夢だわ。
そんな僕を気遣ってか、二番手のロシュさんが何とドラゴンボールの「cha-la-head-cha-la」を唄い始めた!
イ、イケメンが空気を読んで、気を使っている……めっちゃアニメ・ソング唄ってる……心が痛い。
るどよ。るど嬢ってゆーか、おい、るどよ。おい、るどて。お前どうすんだ、この空気。俺、知らねーかんな。
福岡のイケメンが「何が起きても気分は屁の屁の河童」とか言ってんだぞ。「今日もアイヤイヤイヤイ」て。
全然、屁の屁の河童じゃないだろ、これ。めちゃくちゃダメージあるだろ。「空を急降下ジェットコースター」て。
イケメンの運気が急降下するわ。バイオリズムめっちゃ波打ってるわ。荒波だわ。どうすんだよ。

そんな不穏な空気の中、しのめんさんが立ち上がる。何を唄うのかと思えば、なんと「もののけ姫」。
米良美一の高音・カウンターテナーによる名曲。「張り詰めた~弓の~」でお馴染み、あれである。
やばい!コレはスベる!と思いきや、何とこの男、あの歌を原曲キーで歌い上げる。……う、上手っ!
上手すぎて逆に笑える。この歌声により不穏な空気という名の、もののけ達は退治されたのである。お見事。

一時間ほど経過したところで、我がSOYUZの志津さんとしのめんさんが、飛行機の時間の為、ご退室。
僕は一緒にルームを出て、エレベーターを待っている短い時間に、別れの挨拶を交わした。
奇妙な縁だ。この三人が組んでいるという現在は。もしもSOYUZを組んでいなかったら……いや少なくとも、
あの時期に、志津さんと出逢っていなければ、僕は今頃、とっくに文章を書くのを止めていたかもしれない。

SOYUZを結成する前。
僕等がそれぞれ、単に一人の「オレンジ」で「志津」で「しのめん」だった頃。
僕は、ある出来事が切っ掛けで、それまでの自分の作品や才能に、大きな絶望を感じていた。
世の中に、自分の稚拙な作品を提示するのが、本当に恥ずかしかった。そういう事実に気付いていた。
皆、もしかしたら僕の作品を読んで、鼻で笑っているのかもしれないと思って、毎日、気が狂いそうだった。

その時期に、僕に手を差し伸ばしてくれたのが、志津さんだった。
志津さんは、それまで僕の中に何年間も溜まっていた醜く、汚い部分、その全てを黙って聞いていた。
僕は、誰にも話した事の無い、自分の中にあった背負いきれない想いを、ほとんど全て志津さんに話した。
そのような気持ちの中で、僕は【鉛色のサンデー】というまったく新しい作品を書き始め、そして完成させた。
そう、それは行きの飛行機の中で思い浮かべた、あの物語だった。

再び、僕が大きく跳ね飛びたいと願った時に、しのめんさんが現れた。
ドラえもんのような二人は、僕のワガママに「しょがないなぁ……」という顔をして、小さな部屋を作ってくれた。
それがLSR。SOYUZ-LSR3なのだ。僕は、この原点を絶対に忘れてはいけないのだと思う。
勿論、たまに忘れそうになる時もある。僕は本当に、不完全で、未完成なのだ。よく出来た人間じゃないのだ。

三人一緒に、大きく飛ぼう。
それで僕等は、このチームに「SOYUZ」と名前を付けた。ロシアの宇宙船の名前だ。名前の意味は「団結」。
僕は気分屋で、我侭で、自分勝手で、大人になりきれないから、まだ空を飛ぶ夢を見ている。願っている。
願いは等価だ。相応の経験を。経験は記憶になる。『M線上のアリア』に出てくる悪魔は、そう言った。
記憶を差し出す気は無い。経験ならば、いくらでも。少しずつ積み重ねていこう。僕は一人では無いのだ。

エレベーターの扉が開いて、志津さんとしのめんさんが乗り込んだ。
何処かのルームから、歌声が聴こえた。小さく片手を上げる。
志津さんと、しのめんさんの笑顔が見えた。僕は頭を下げた。
そしてエレベーターの扉が、閉まった。
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[ 2008/08/24 02:18 ] 告知:M線上のアリア | TB(-) | CM(-)
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