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花とアルゼシオン



其れは誰もが一度は耳にした事がある曲で、僕も、君も知っているはずの曲だった。
其の声には抑揚が無く、流動的で、男性的だが、女性的とも言える。
おおよそ中性的という単語で片付けるには陳腐なほど、其れは人間的な声だった。

曲名はアルゼシオン。花とアルゼシオン。歪んだリズムの上を、静かに歩くような音。
其れは誰もが一度は耳にした事がある曲で、何処かで覚えたはずの歌。
ところがフレーズ一つさえ、今では誰も思い出せない。

其の声の感覚や、音の雰囲気は、辛うじて僕の記憶の奥底に、濁流に留まる粘着テープの裏側のように、
何とか引っかかっては居るモノの、曲名だけが宛先不明の郵便物に押された判子のように、残るだけで。
肝心の曲が思い出せない。
名前も、声も、音も、感覚も、雰囲気も知っているのに、其れがどんな曲だったのか、まるで思い出せない。

噂話は都市伝説のように、僕等の記憶に刻まれる。花とアルゼシオン。
アルゼシオンを聴いた人は、誰でも必ず幸せになれる。其れは噂話。意味の無い都市伝説。
ところが僕等は、誰もが一人残らず、何処かで一度は耳にした事があるはずの、其の曲を思い出せない。
必ず幸せになれるはずなのに、其の術を知らない。僕等の大好きな曲は、どんな曲だっけ?

其れは街角のアンプから、テレビやラジオの中から、誰かの鼻歌から、何時だっけか聴いた曲。
大好きな人達の傍で聴いた曲。父や、母や、兄や、姉の傍で聴いた曲。友と聴いた曲。
其れから、あの日、君と一緒に聴いた曲。

弱くて、脆くて、儚くて。

優しくて、悲しくて、切なくて。

だけれど守りたかった、あの名前。

花とアルゼシオン。
今頃、何処の空を流れているんだい?
其のフレーズを、風に乗せて。其のリズムを、命に乗せて。
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[ 2008/09/16 23:08 ] 小説 | TB(-) | CM(-)
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