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透明ストレンジ

254.jpg


「あたたかい?」


彼女が最初に訊いたのは

意見でも

要望でも

感情でも

無く

また

温度の事。 


「さむいよ とても」

「なぜ?」

「君 がいないから」


彼女は短く

回転する車輪のように小さく笑って

僕に触れた。


「私 いるじゃない」


射精の後は

虚しくなる。

白濁した液体を眺めていると

消えてしまいたい気分になる。


彼女と会話をする度に

それと同じ気分になる。


「いないよ」

「いるわよ」

「なら 何処に?」


勘違いしないでくれよ 此処は

何処にでもある近所のファミレスだよ。

公園のベンチでも ホテルの個室でも ましてや

君の部屋でも無い なのに何故 こんな気分にならなきゃ


「イけないんだ」

「何が?」

「何処にもイけないんだ」

「誰が?」


君はまるで 空気のよう。

寄ると揺らめく 炎のよう。

完全に奪い去りたい気分だ。

完全に奪い去られたのは僕だ。


(酸欠状態で射精すると気持ちが良いんだって)


ああ 何の本で読んだのだったか。

それとも誰かの台詞の中か。

さて どちらにしても


「くだらない」

「何が?」

「僕と君との関係が」


それでも彼女は反応しない。

笑いもしなければ 怒りもしない。

悲しむ事もしなければ 呆れる事もしない。

それで僕は またしても こう言わざるを得なくなる。

ああ 間違えた。


「僕が」

「何が?」

「くだらない」


そうして初めて 彼女は笑う。

咀嚼するように 付け加える。


「本当に くだらない」


気に食わないのだ 余裕が。

無反応が。

無批判が。

不感性の 僕達の 会話が。


「明後日は?」


彼女が不意に 声を出す。


「何が?」

「何かある?」

「何もないよ」

「なら 明日は?」

「何の話?」


何処にでもあるような この店で

もしも二点だけ変わった事があるとすれば

何故かトイレの傍に貼られた 少し洒落たポスターと

あとは彼女が座っている事だ。


どうにも似合わない だからと言って

彼女に似合う場所なんて 何処にあるのだろうか。

彼女と僕が こうして同じ時間を共有している事自体が 酷く奇妙だ。


赤色の上を飛んでいても

青色の下を泳いでいても

白色の中を歩いていても

黒色の奥を眺めていても

金色の夜を舐めていても

その全ては

きっと彼女に 似合わない。


まるで透明なのだ 彼女は。


何処にいようとも 誰といようとも 会話しようとも

笑おうとも 怒ろうとも 触れようとも 抱き締めようとも

携帯が鳴ろうとも 自分を偽ろうとも 僕が彼女を感じられた事は

一度も無いのだ。

これほど虚しい事があるか。

これほど虚しい事が 世の中に 他にあるか。


彼女を強く想う度 僕は射精したような気分になるよ。

白濁した半透明の液体を眺めて また消えてしまいたい気分になる。

それでも彼女を想うのだ。吸っても吸い足りない酸素のようだ。それはまるで


「ずっと死ねない気分だよ」

「なら 明日は?」

「何の話?」

「あたたかい?」


疑問符だらけで意味が解らない。

そしてまた回転するように 同じ会話を繰り返している。

まるで逃げ場が無いのだ。だから出口を探している。まるで血液と同じだ。


「さむいよ とても」

「なぜ?」

「君 がいないから」


彼女は短く

回転する車輪のように小さく笑って

僕に触れた


「私 いるじゃない」


射精の後は

虚しくなる。

白濁した液体を眺めていると

消えてしまいたい気分になる。


彼女と会話をする度に

それと同じ気分になる。


「いないよ」

「いるわよ」

「なら 何処に?」

「今日に」


今日に と言って 彼女は冷めた珈琲を口に運んだ。

よく解らない 台詞 と 動作 だった。

ところが 綺麗だった。


だから僕の心臓が一回 ドクン と大きく鳴るのを

僕は聞き逃す事ができなかった。

とても残念だ。

何故なら やはり 僕は彼女を想うだろう。


「私 傷付いた 君の台詞で」


ほんの小さな反応。

珈琲と反応。

色。


その透明の隙間を縫って

例えば琥珀色に染まる彼女を

また見たいと願うだろう。


その透明の隙間を縫って

例えば血液色に染まる彼女を

もう見たくないと願うだろう。


透明なのでは無い。

只 見逃しやすいだけなのだ。

まるで心臓が 休まず脈を打っているように。

明日でも 明後日でも もちろん昨日でも無く まったく今日に。


「僕 傷付けた 僕の台詞で」


すると彼女は

回転する車輪のように小さく笑って

また

僕に触れた。



「あたたかい?」



何て欲望だ。僕の欲望は。

何て欲望だ。僕の欲望よ。


虚しい射精と嘆きながらも



求めている この名は何だ。


明らかな熱を伴い また回転する この名は何だ。



(酸欠状態で射精すると気持ちが良いんだって)



ああ くだらない。

だが 生きている。

その 単純な事実に気付く度

また 色を見付ける。


「あたたかい」


今日。

半透明な 僕と彼女。

次の色を 求めている 今日。

何処にでもある 近所のファミレス。

まるで似合わないはずの 彼女とファミレス。

窓の外には色とりどりに飾られた クリスマス・ツリー。

ああ 忘れてた 思い出した まるで回転するように また今年も。



「明日は?」


そうだな。


「きっと あたたかい」
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[ 2008/12/22 06:45 ] 小説 | TB(-) | CM(-)
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