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半透明の、白だ。

月が大きな夜は、嫌いだった。
アルファベットの文字列を眺めても、其処に理由など見出せないのに、
残念なことに意味は成立していて、此のように問いかけた。
――"吸い込め。そして吐き出せ"。

其れで月が大きな夜に、彼女の肌を這ったのは、半透明の白だった。
最初、窓から見える月を眺めて気を紛らわせたが、途中からは苦痛に変わった。
音も無く揺れる世界で、大きな月だけが見えたので手を伸ばしたが、届きはしなかった。

理由など無いが、残念なことに意味は成立していたので、
彼女は其れを頭の中で、何度か繰り返した。
そして声に出した。

「吸い込め。そして吐き出、」

せ――。
揺れ動くブランコから、飛び降りるようなリズムで。
飛び降りた先に地面は無い。真っ逆さまに、墜ちる。其のようなリズムで。

此の夜、恐らく驚くほど彼女は一人だった。
読みかけの本を開いても、耳元で音楽を聴いても、一人だった。
小学二年の頃だったか、世界で一番綺麗な色は白だと信じていたから、
白の絵の具が沢山欲しくて、近所の文房具屋に行き、こっそりポケットに入れた。
そんなことを思い出した。

其の日から、

「汚れてしまったんだ」

誰が?

朝が来る前に、夜は必ず息を潜めるから、全て吸い込んでしまいたい。
吐き出して、何も変わらず、時計の音さえも聴こえない。
自分の心音を感じて、思わず耳を塞いだ。

少しだけ開けた窓から、線路の上を疾走る、列車の音が聞こえた。
貨物列車だろうか。出来れば、寝台列車だと良い。
誰かが真っ白なシーツで眠る、寝台列車だと良いと、彼女は思った。

自分は、何処へ行くのだろう。
手を伸ばしても、やはり何処にも届きはしなかった。
其れで大きな月が邪魔だった。白く、円く、厭味なほどに正しかった。

無音。

ティッシュを、一枚。

雑音。

半透明の白が、彼女の肌を這ったので、彼女は其れを拭き取った。
其処に理由など見出せないのに、残念なことに意味は成立していて、
ほとんど同じ瞬間に、目的と呼ぶことも出来た。

其れは最後に、彼女に此のように問いかけた。

――"吸い込め。そして吐き出せ。また吸い込む為に"。

馬鹿げている。
と思ったが、窓の外から小鳥の声が聞こえた。
同じように世界は、呆気ないほど青く、そして白く、澄み始めていた。

溜息を吐き、吸い込んで、少し笑い。
カーテンを勢いよく開け、其れで彼女は、ようやく眠った。
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[ 2011/05/11 18:08 ] 小説 | TB(-) | CM(-)
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