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僕達は其れを「テキストサイト」と呼んだ。

もう一年以上前の話になるけれど。

ある大学生の女の子から、メールを戴いた。
こうしてmixiやblogのような連絡ツールが沢山ある昨今、
突然、知らない人からメールが届くという場面は、もう少なくなった。

昔、ネット界隈で「テキストサイト」なるものが流行した時期があった。
インターネット黎明期、まだネット小説という概念も無い頃、
只、毎日のように文章を書き、不特定多数の読者を獲得することだけに、
情熱を傾けた若者達がいたのだ。

書き手である彼等は、10代後半~20代前半が中心だったように思う。
当時、最も注目されたテキストサイトは『先行者』という記事で有名になった『侍魂』で、
まだ青く若かった彼等は、誰もが自分のホームページを『第二の侍魂』にするべく、
何となく似たような文章を書き、何となく似たようなデザインのサイトを作った。

僕も、その中の一人だった。
当時の僕は、うっすらと人生に絶望し、ちょっとだけ生きる目的を見失っていた。
絵描きになるという夢も曖昧になり、仲間達が就職する中、何となくアルバイト生活を続け、
それでも自分には何か出来るはずだと信じ、しかし、やはり生きる目的は見失っていた。

何もかも曖昧な時代に、僕は絵を諦め、代わりに言葉という手段を得た。
得たというほど大層なものではない。其れは、ずっと昔から其処に在ったのだから。
テキストサイトという場所で文字を綴るようになり、しかも知らない誰かに読んでもらえる。
あの頃、それは本当に素晴らしいことだった。

当時の一般的なテキストサイトが、一番人気だった『侍魂』に追従する形で、
文中の文字に色を付けたり、文字のサイズを変えることによって面白さを演出する、
いわゆる「フォント弄り」を駆使した、エンターテイメントなものだったのに比べると、
当時の僕のサイトは、そうしたフォント弄りを駆使した馬鹿話を書くのと同時に、
詩や小説を載せたり、やたら生きるだ死ぬだのと書いている点で、
少しだけ異質だったかもしれない。

そんなサイトだったので当時は知らない人からのメールも、よく戴いた。
失恋や、虐待や、自殺未遂や、人生相談のような内容のメールも、よく届いた。
あの頃はmixiもblogも無かったし、もちろんtwitterも無かったので、
知らない人からメールが届くのも珍しくなかったのだ。
そこで話を戻す。

もう一年以上前の話になるけれど。

ある大学生の女の子から、メールを戴いた。
こうしてmixiやblogのような連絡ツールが沢山ある昨今、
突然、知らない人からメールが届くという場面は、もう少なくなった。

そのメールの内容を簡単にまとめると――


「子供の頃、お父さんのパソコンからネットをしていて、
 その中で見付けたサイトに載っていた物語が大好きだった。
 お父さんのPCを壊してしまった日から、思い出すたびに検索していた。

 だけど幼い時の記憶なので、
 サイトの名前も物語の名前さえ覚えておらず、
 唯一、覚えていたのは黒い背景と、白い文字。
 それとトップページに飾られていた『orange』の文字と絵。

 ずっと見付けられず苦労しました。
 だけど今日、見付けました。
 嬉しくてメールしてしまいました。

 今から、あの物語を読んでこようと思います。」


大体、このような内容が書かれていた。

このメールを読んだ時、僕は本当に嬉しかった。
出来ればスカした態度でカッコ付けたいところだが、僕は本当に嬉しかった。

十年前、当時まだ小学生くらいの女の子が、それを大学生になっても覚えていて、
思い出すたびに探し続けて、やっと見付けてくれるなんて、どれほど嬉しいことか。
一冊の本が売れるより嬉しい。
まぁ実際、M線上のアリアとかびっくりするほど売れてないけど、売れるより嬉しい。

何故、こんな一年以上前の話を、今になって書こうと思ったのか。

最近、何となく昔のことを思い出す機会が多かったのだけれど、
数日前に気が向いて、何となく当時使っていたメッセンジャーを立ち上げてみた。
すると、あの頃メッセンジャーで話していた人達は、もう全然いなかったのだけれど、
何人かの知り合いが、すぐに僕を見付けて話しかけてくれた。

十年振り?
そこまで長くないかもしれないけれど、
少なくとも、その内の一人は、それくらい振りだった。

僕よりも当時の僕のことを変に覚えていて、
「オレンジさんの文章の言い回しは、こんな感じだった」とか、
「あの時の○○という発言に対して、こんな風に返してきた」とか、
「ウルトラセブンがお見舞いにくる話が好きだった」とか言ってくれる。

特にウルトラセブンの話が好きだったと言ってくれる人は、
あまりに好きすぎて、家族・親戚・生まれたばかりの姪っ子にまで喋り、
果ては自分の好きなラジオにまで投稿し、見事に採用されてしまったと言っていた。
その人は多分、僕がFMラジオの自分の番組で、そのネタを何度も話したことを知らない。

自分の原点を確かめてみたくなる時、僕はやはり、あの頃の僕を思い出す。
何となくどんよりとした窓の外、何となくどんよりと絶望し、何となく夢を諦め、
しかし手の中に言葉が残り、それをキーボードで打ち始めた、あの頃。

たまに、走るのも、歩くのも、厭になるとき。
少し立ち止まってみたくなる時。
僕は思い出すのだ。

僕には言葉が在った。
其れを望んでくれる人達も居た。
僕達は其れを「テキストサイト」と呼んだ。

言葉は形を変えて、今も在るはずだ。
其れを何処かで、今は知らない誰かが、きっと受け取っている。
僕達は其れを、これから何と呼ぶだろうか。

さて、今日はラジオだ。
何を話そうか。
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[ 2011/09/05 14:10 ] 雑記 | TB(-) | CM(0)
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