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I

僕が僕らしいって事は、そんなに偉い事なのか?
君が君らしいって事は、そんなに偉い事なのか?

そりゃ僕にとって、君は君以外には在り得なく、君じゃなきゃ駄目なんだけど、
君が誰にも重ならず被さらない、唯一無二の、神々しい存在じゃなくたって良いと思ってる。
同じく、僕が凡庸な、至極一般大衆的な、何処にでも在るような有り触れた才能を持て余し、
野良犬みたいに闇雲に吠えるだけの、大した値打ちの無い男だとしても、残念ながら僕は僕だ。

君は僕を必要としてくれるだろうかね。
問題は其処で、それで僕は考えずには居られなくなるという訳だ。
空気の抜けたサッカー・ボールを蹴り飛ばす為には、空気注入器が必要なように、
僕が君に触れる為には、どうやらアイデンティティというモンが必要なんだそうだよ。

何処もかしこも、それで埋め尽くされている。
高名な小説家は「誰かの真似をしていてはいけない」と言うし、
高名な写真家は「誰かの真似をしていてはいけない」と言うし、
高名な音楽家は「誰かの真似をしていてはいけない」と言うだろう。
その癖、医者には「これは誰かと同じ病気ですね」なんて言われる始末だ。

他の何者でも無い自分らしい何か、というモノを誰もが見付けるならば、
全世界に60億人。
60億通りのアイデンティティが存在してるって事だよな。

ところが実際、自分らしい事、自分にしか出来ない何か、なんてのは、
眉唾モンの虚しいお題目に過ぎないんだと思うよ。

僕らは、僕らの国は、新しいモノばかり追おうとするし、
誰も知らない、斬新な、新鋭の、目新しいモノばかり見ようとしてる。
一ヶ月前に発売された新曲は中古屋の棚に並ぶだろうし、
一週間前に発売された雑誌はゴミ箱に捨てられる。
昨日のニュースは当然、古い話題だ。

本当の事を教えてくれよ、サリィ。
誰もが知ってる、他愛の無い、何の値打ちも無い事柄の中に、
どれだけ素敵なモンが隠れてたのか、僕には見付ける事さえ出来ないんだ。
それでまた、自分探しを止めようともせず「自分らしく在りたいんだ」なんて事を考えてる。

当たり前の事を、当たり前に出来る人間になりたい。
誰もが知ってる事を、誰もが思ってる事を、当たり前に叫んだら。
例えば君は、僕の声に気付いてくれるかなぁ?

全世界に60億人。
きっと何処かで、誰もが似たような言葉を使ってるけれど。
例えば君は、何処にでも有り触れた、僕の声に気付いてくれるかなぁ?

僕は君が好きなんだ。

自分らしさを求める最終地点で、
伝えたい台詞なんて、きっとそんだけなんだ。
君にも同じように思って欲しいって、願って止まないだけなんだ。
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[ 2013/11/02 00:36 ] 小説 | TB(-) | CM(0)
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