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ボクラが残したコトバ 第一話『夢』

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少年は息をしていた。

いや

たくましい骨格。

浅く伸びたひげ。

煙草を吸う仕草。

其れ等は少年の年齢と容姿を

もう少年とは呼び難いソレに摩り替えつつあった。



だから青年は息をしていた。

青年は、息をしていた。

生きていた訳では無い。

もう何日も外には出ていない。



そして出る理由も無い。

布団から起き上がって外へ出たところで

したい事もなければ

しなければならない事も

特に何も無かった。



無造作に増えていく飲料水の空き缶を

部屋の片隅に綺麗に追い遣る事くらいが

青年がするべき事のせいぜいであった。



「綺麗に」追い遣るのも

「乱雑に」追い遣るよりは

何となく充実するだろうという

理由とも付かない理由なだけであった。



青年は、今こうして目の前で起きている全てが

現実と呼ばれ得る全てが夢だとしたら面白いのにと考えた。

そうして、やがて、こう考えるようになった。



「所詮、是は夢だから、頑張る意味なんて無いのだ」



青年の愛する女が毎日

青年の元へ通っていた。

女は何時も仕事帰りのようだった。

何時も一日分の疲労と雑音を連れてきた。



青年は、女は好きだったが、女の雰囲気は嫌いだった。

そういう女を見ていると何故だか悔しくなったからだ。

だから青年は、何時も激しく女と抱き合った。

そうすれば不思議と悔しくなくなった。



「所詮、是は夢だから、頑張る意味なんて無いのだ」



青年には夢が在った。

まだ少年と呼ばれていた頃からの。

青年には夢が在った。

吹けば飛ぶような夢ではなかった。



青年は音楽と関わりたかった。

ギターを弾いて生きたかった。



夢の眺め方は知っていたが

夢の叶え方は知らなかった。



其の夢さえも

所詮は大きな夢の中の一つに過ぎず

何時か目が覚めたら全ては終わるのだろうか。



いや、始まるのだ。

青年のまだ知らぬ新しい何処かで。

目が覚める日を青年は待っていた。



青年は毎日仕事帰りの女と抱き合った。

此の夢の中では其れだけで充分だった。



空き缶が高く積もり上がった。

綺麗に綺麗に積もり上がって

そして崩れた。



女が病気になった。

或る日から女は青年の元へ来なくなった。

突然の宣告にも関わらず

女の病気は日に日に進行しているようだった。



青年は外へ出た。



其れはとても久し振りに。

女の場所へと向かう為に。

大量の人間と大量の雑音。

太陽の光に吐き気がした。



女は酷く痩せ衰えていた。

何度も愛撫したあの唇はカサカサに乾いていた。

握り締めた白く細い指先は更に細くなっていた。



あの日のように抱き合う事など

もう出来ぬのであろうと、青年は悟った。

そして自分に言い聞かせた。






「大丈夫、是は夢だ」






青年は毎日、女の元へと通うようになった。

外へ出るのは嫌だったが仕方が無かった。



外に出る事が多くなると今度は

中に戻った時に汚さが目に付くようになった。



青年は散らばった空き缶を全てゴミに出した。

外から出て戻る毎に中が綺麗になっていった。

そして綺麗になる毎に青年は女の元へ通った。

だが青年に反比例して女は痩せ衰えていった。



話したくても

触れたくても

唇付けをしたくても

女はあまり反応しなくなった。



其の日。


青年は女の名を呼んだ。


やはり反応しなかった。


だからゆっくりと唇付けをした。


其の唇はもう嘗ての其れではなく


酷くカサカサに渇いていたけれど。



すると女は目を開けた。


何故か


女の目の淵から何かが零れて


真白の綺麗なシーツが濡れて


女は笑ってるのか泣いてるのか


よくわからない顔をした。






よくわからない顔を、した。






よくわからないから、青年は笑った。






そしてまた、唇付けた。
































とても、とても、とても、長い、唇付けだった。
































次の朝、女は死んだ。
































「大丈夫、是は夢だ」












青年は夢が覚める事を願った。


毎日毎日毎日。


青年は夢が覚める事を願った。




大丈夫、大丈夫、大丈夫

大丈夫、大丈夫、大丈夫

大丈夫、是は夢だ。




しかし夢は覚めなかった。

隣には誰も寝てなかった。

部屋は妙に綺麗だった。



生きなければならなかった。


でもどうやって。


息をするだけでは無い毎日。


女はもう居ない。


青年を充たしてくれる相手はもう居ないのだ。





自分で生きるしかない。


自分で充ちるしかない。


空き缶を積み上げる事でも


セックスをする事でも無い。


もう夢は覚めない事を知ってしまったのだ。




泣いても喚いても


祈っても願っても


現実しかない。


逃げ場は無い。


夢は覚めない。




青年は中を見渡して見る。




見慣れた光景だった場所は


今では綺麗に片付けられている。


空き缶があった場所。


女と抱き合った場所。


ギターを掻き鳴らした場所。







青年の目の中にギターが入った。












夢。



夢だ。



夢はサメナイ。



だから青年はもう一度夢を見た。



そう今度は



サメル夢ではなく。




此の紛れも無く

此のうざったく

此のかけがえなく

此のクソったれの

此の現実の真中で






















青年は、イキ始めた。
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[ 2013/11/11 22:24 ] 長編:ボクラが残したコトバ | TB(-) | CM(0)
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