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ボクラが残したコトバ 第五話『子』

全ては平等に不平等だ。

決して平等では無い。

かと言って不平等でも無い。

只、全ては平等に不平等なのだ。



女には子供が居る。

言葉を少し話すように

なりかけた年頃の子供。



女には夫と呼ぶべき者は居ない。

だから子供に父は居ない。

女には子供が、居る。










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第五話 『子』










生きる事は

全ての人間の上に平等だと言う人が居る。

死ぬ事は

全ての人間の上に平等だと言う人が居る。



全て等しく生き

全て等しく死ぬ。



其れは確かにそうだろう。



だが

生き方



死に方



全ての人間の上に平等では無いように思える。



女が子供を産んだ時

既に子供に父親と呼ぶべき存在は居なかった。

産まれ出された瞬間から

子供にとって

父親とは

ナキモノ

としてイキ始めるしかなかったのだ。



或る者は五体満足で

或る者は五体不満足で

或る者は産まれる事さえ許されず



或る者は親族一同から歓迎されて

或る者は父親を知る権利を奪われ

或る者は産まれる事さえ許されず



全てが平等だと叫ばれる世の中に

全ての不平等な事情を抱えたまま

産み出される。






平等に生きる。






夜の繁華街。

女は夜の繁華街をよく歩く。

子供を連れて繁華街をよく歩く。

同じように沢山の人間が歩いていく。



男。


女。


若者。


年寄。


其れ等の中間。




此処に居る全ての人間が平等なのであろうか。


此処に居る全ての人間が不平等なのであろうか。




幸せそうに手を繋いで歩いて行く恋人達が居る。


寒そうに両手をポケットに入れて歩いて行く人が居る。


金を稼いでそうな格好で高級外車に乗り込んで行く男が居る。


金を稼いでなさそうな表情で手持ち無沙汰に通り過ぎる男が居る。




全ては平等に不平等だ。




性別も年齢も経済も

今住んでいる国家も

全てに格差が存在し

格差は生き方に影響する。

生き方は死に方に影響する。



女は子供を抱き締めた。

子供は只、眠っていた。



目の前の信号が赤に変わり

女は足を止めた。





見慣れた風景。





此の信号を渡って右に行けば

路上の絵描きが絵を描いている。



此の信号を渡って左に行けば

路上の詩唄いが歌を歌っている。



女のよく見知った情景。

信号は赤のままだった。



こうして足を止める。

足を止めている間にも時計の針は進んでいて。





時間は平等だろうか。





こうして女が止まっている間にも

着実に歩き続けている人達は居て

其れでもこうして止まっている事は

次に歩く為に必要な事なのだろうか。



時間の長さと速さは平等なのだろうか。

本当に。



子供を抱き締めて寒空の下に居る女と

目前に建っているビルの中の居酒屋で

正に今

顔を赤くして楽しそうに食べて飲んで笑っている

知らぬ誰かとの

時間。




楽しい時間は短く感じるし


苦しい時間は長く感じると


人は言う。




感じているだけだろうか。




時計の進む速度。


秒針が刻む時間。


沸き起こる感情。


足元に残る現実。




寒さを我慢する時間の長さ。


暖さを堪能する時間の短さ。




時間は平等に不平等だ。




信号が青に変わった。

人波が一斉に歩き始める。

後から押されて

女は軽く躓いた。

子供が目を覚ました。



すぐに優しく頭を撫でる。

そして優しく抱き締める。



さて何処へ行こう。



此の信号を渡って。



右では絵描きが絵を描いて居る。



左では詩唄いが歌を歌って居る。



よく見知った情景。



女には絵描きと詩唄いが

何時もとてもよく似た二人に見えた。

二人共、未だ見ぬ何かを求めるのではなく

失ってしまった何かを求めているように見えた。



二人の寂しそうな姿が

女は嫌いではなかった。




さぁ、ドチラに曲がろう。




女は時折こんな事を考える。

もし無人島に誰か一人連れて行って良いなら

誰を連れて行こうか。



愛しい男性の名を思い浮かべる。

愛しい男性と二人ならば

無人島で過ごすのも悪くないかもしれない。



何にも縛られる事の無い無人島で

一緒に食料を探して

一緒に住居を作って

一緒に寄り添い眠る。

一緒に脱出計画を立てるのも良い。

不安な事さえ全て乗り越えられるだろう。



なのに此の空想の途中で何時も邪魔が入る。






あの女が居たら?






同じ質問をあの女にしたらどうなるだろう。


あの女も同じ男性の名を挙げるに違いない。


そうしたら自分はどうすれば良いのだろう。




身を引けば良い?


あの時と同じように?


奪い合えば良い?


あの時と同じように?




世の中から争いは無くならない。


どんなに平和を願っても


争いは無くなりはしないだろう。




天は人の上に人は作らなかった。


ただ


天は人と人を別々に作ったのだ。




個と沢山の他が存在するように。


他と沢山の個が存在するように。


だから世の中は平等に不平等だ。




欲しいモノが黙ってても手に入る事もあれば


欲しいモノを大勢の他人も欲しがったりする。


大勢が同じモノを欲しがっても


どうしても自分が欲しいならば


奪い合わなければいけなかったり


身を引いて諦めたり


我慢したり


妥協したり


憎悪したり


後悔したり


転換したり


昇華したり


しなければいけない。






目を覚ましたばかりの子供が


女を見上げて、何故か笑った。






其の笑顔があまりに愛しかった。






だから女は信号を渡って右に曲がった。

右に曲がるのが正しい事のような気がした。

何故だか迷いは無くなっていた。




「息子の似顔絵を描いて頂けますか?」




普段からよく見知ってはいたが

絵描きに話し掛けるのは初めてだった。

子供を絵描きの前の椅子に座らせると

絵描きは無表情で頷いた。

まるで純粋に単純なる模写でもするように。



描き上げると絵描きは無愛想に絵を渡した。

絵を観ると

普段から垣間見える通りの絵描きが

あの寂しそうな絵描きが描く絵らしくて

思っていた通りで

女は嬉しくなって笑った。










子供が無邪気に微笑んでる絵だった。










全ては平等に不平等だ。



決して平等では無い。



此の子供は女の子供だ。



他の誰の子供でも無い。



自分が守るべきモノだ。





男で在る事も


女で在る事も


父で在る事も


母で在る事も


子で在る事も




住んで居る地域も


稼いでいる金銭も


容姿や骨格や服装も


先日の試験の点数も


先月の仕事の業績も


今晩の夕食の内容も


当たり付きのアイスを買えば当たる人がいて


何度買ったって当たらない人だっている訳で




生きる理由も


死ぬ理由も


生きる価値も


死ぬ価値も




全ては平等に不平等だ。


決して平等では無い。


かと言って不平等でも無い。


只、全ては平等に不平等なのだ。










アナタに在ってワタシに無いモノ。










そう。










ワタシに在ってアナタに無いモノ。










全ては平等に不平等。










其れだって悪くは無い。










子供は女を見ていた。










女は子供を優しく抱き上げる。


























さぁ、一緒にイキて行こうか。
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[ 2013/11/15 20:08 ] 長編:ボクラが残したコトバ | TB(-) | CM(0)
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