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そして君を、思い出す

失望が

大きく口を開けて 僕等を飲み込んだとして



「どんな時に」

「ん?」

「どんな時に、思い出す?」

「何を?」

「どんな時に、僕を、思い出す?」



君は頬杖ついて


斜め上を眺めて


少しだけ笑って



「ふむ」

「思い出さない?」

「思い出すよ」

「例えばどんな時に?」

「美味しいご飯を食べた時に」



鈴の音が聞こえて

冷たい空気が流れて

扉が閉まる音が聞こえて



「何だ、それ」

「あれ、不服?」

「どんな気持ち、それ」



またしても 君は笑って

季節外れの 冷たい珈琲なんか飲んで



「変な気持ち」

「ん?」

「嬉しいような」

「うん」

「寂しいような」

「うん」

「申し訳ないような気持ち」

「何だ、それ」

「食べさせてあげたいなって気持ち」



氷が回転して

沈まずに 浮かんで



「僕にも」

「君にも」



浮かんだまま 溶けて

溶けきれずに 沈んで

それは何だか



「悲しい気持ちだ」

「そうかな」

「せっかくの美味しいご飯なのに」

「そうだね」



あたたかい 何か が欲しい

それは まだ手にしたこともないものか

それとも すでに手にしたものなのか

もしかして なくしてしまったものか



「美味しいご飯ができた時も」

「うん」

「同じような気持ちになるかな」

「うん」

「オムライスが上手にできた時なんか」



嬉しいような

寂しいような

申し訳ないような



「どうして君がいないのか、って思う」



失望が

大きく口を開けて 僕等を飲み込んだとして



「僕は、いるよ」

「いないよ」

「せっかくの美味しいご飯なのに」

「そうだね」



例えば

どうしようもない事情で 僕等が分離するとして


あたたかい 何か が欲しい

それは まだ白い湯気の中に存在して

液体と固体の中間で 行方を捜していて

気体にも成りきれず 期待にも応えられず



「だからね、残さず食べるの」

「ん?」

「それ全部、残さず食べるの」



空虚な満足感の中で



「だから私は、君のこと、すべて残さず食べるのよ」



失望が

大きく口を開けて 僕等を飲み込んだとして


氷が全部 溶けてしまって

僕等が 溺れてしまったとして


僕等は きっと いつか 馬鹿みたいに

すべて飲み込んでしまう


すべて飲み込んでしまって

からっぽに 渇いてしまった世界で

カラカラの サラサラに なってしまった世界で




「そして君を、思い出す」




僕等はまだ 楽しくやれるよ

種を撒き また何か食べよう


思い出して 誰もいなくて

季節外れの 冷たい珈琲は

気が付けば何処にもなくて

鈴の音が聞こえて


不意にオムライスを作りたくなって

僕は玉子を二個 割った
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[ 2013/11/29 04:40 ] 小説 | TB(-) | CM(0)
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